川田章吾

ドクター・スリープの川田章吾のレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.0
面白かったけど、これはスタンリー・キューブリックの『シャイニング』の続編ではない。別物として純粋に面白かったっていう評価。
だから、スティーブン・スピルバーグの『レディプレイヤー1』みたいな、リスペクトものと考えた方がいいかも。

そもそもキューブリックの『シャイニング』の良さって、夢の中のトラウマ(無意識)みたいに、なんだか説明できないけど怖いっていうのが、自分の中では面白いんだと思う。
訳わかんないのに、父ちゃんが斧持って襲ってきたり、全裸のば○あの幽霊出てきたり、もうあのホテルが怖すぎるみたいな感じ。しかも凄いのは、こういう訳からない物語なのに、見る側をしっかりと引き込んでるところ。

でも、今回はその「訳わからない」前作に劇中のロジックを作ってしまった。だから、前作の方向性とは似て非なるものになっているんだと思う。

じゃあ、今回の作品は駄作かっていうとそうじゃない。サスペンスを物語の軸に、ホラーの表現を巧みに使い、ファンタジーな設定を組み合わせている。
伏線の回収も華麗ではないけど、手堅くしてて、見てて充分に楽しめた。

ただ、難点は、前作のジャック・ニコルソンやシェリー・デュヴァルの気持ち悪い顔を今回のリメイクキャストが出せてなかったところ。やっぱ、前作のキャストってキモさも含めてハマっていたんだなって…これは真似できない。強引だけど、このキャスト布陣は、CG使って再現した方が良かったかも。
あと、物語の構成で言うと、アブラが成長してないのはダメかな。アブラは最初から自分の能力を正しく使おうとしていたから、最後のシーンで成長してない。
ダニーが自分のトラウマを克服し、アブラはかつての自分みたいにトラウマを怖れてたけど、2人でホテルを乗り越え、ダニーの意志を受け継いだアブラが最後…みたいな展開にしないとラストシーンがオチない。

最後に、もしも前作の継承した作品と銘打つなら、やはりあのホテルを最後の見せ場に持ってくるのではなくて、あのホテルを軸に進めた方がいいかも。

追伸:この映画を見ていて一番怖かったのは、人が殺されるシーンで「フヒヒヒヒヒ」と笑っていた前方のお客さん。この人とは一緒に帰りたくない…
川田章吾

川田章吾