クルードス

ドクター・スリープのクルードスのネタバレレビュー・内容・結末

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

キューブリック版シャイニングの大ファンとしてはモヤモヤする思いを吐き出させてもらいます。

単体の映画としてはそんなに悪くなかった。
でもシャイニング続編の肩書がある以上、比較されるのは避けられないでしょう。

少年ダニーの40年後。
シャイニングの能力を隠して生きるも、あのかわいい少年もすっかりおっさんに。
自分自身も親父と同じように酒に溺れるダメダメ人生。

転居先で就いた仕事がホスピス患者のお世話。死ぬ間際の人に寄り添い、お見送りするという仕事に彼の能力がフルに活かされ「ドクター・スリープ」という称号もいただく。
持ちたくもない能力に苦しめられながらも、自分のやるべき事に出会う前半の展開は「シックスセンス」を連想した。

その後登場する超絶シャイニングを持つ少女アブラ。
個人的にはこの人物が今回の映画で一番良かった!
終始迷いのないキリッとしたかっこいいキャラクター。
ダニーが彼女に乗り移る場面の演技も素晴らしかった。

アブラがダニーに助けを求めて一度は断るが、1作目でも出てきたコックのハロランが霊で出てきて「彼女を助けろ。お前にはまだ借りを返してもらってない」と宣うが、お前そもそも前作で全然役に立ってないじゃん!というツッコミはいれざるを得ない(笑)
とは言え、原作では恐らくもっと活躍していて、それに基づく発言だったんだろうなあ。

今回の悪役、長生き怪物軍団(見た目は普通笑)
こいつらが何とも中途半端というか何というか…。

能力者の生気を補食して長生きしているが、スーパーでトイレットペーパーを買ってたり、やけに生活感がある(笑)

長老が死ぬ時は皆悲しんでいるのに、亡くなった途端に群がって生気を吸い取る場面は、そんなにお腹を空かせてたんだねと思った(笑)

アブラを補食するために怪物軍団が家に向かっている時は「彼らもきっとすごい能力を持っているはず!一体どういう戦い方をするんだろう?」とワクワクしてたらまさかの銃撃戦、しかも異様に弱い(笑)

怪物軍団のボスと言えるローズも、余裕綽々で特殊能力を使ってアブラの様子を見に行ったら、罠に嵌められてコテンパンにやられるし、全体的に怪物軍団がとにかく際立ってない。
「奴らは裕福だ」とか取って付けたようなキャラ付けをされてたけど、印象としては細々と食い繋いで長生きする日陰者な印象。

映画としてはこの軍団こそ強者として描かないと盛り上がらないと思うが、この辺は原作に基づいているのかな?
ローズがアブラの所に宇宙空間を飛んでいくトンデモ場面もあるし、彼等の場面は笑いながら観るのが正解なのかも。

大見せ場は何と言ってもラストのオーバールックホテル。
それなりにテンションは上がるものの、どこか予定調和で想像の範囲内を出なかったかなあ。

予想外&画作りの美しさ&観ている時のテンションの上がり具合で言うと、レディプレイヤー1のシャイニングの場面の方が上だった。

ダニーがお父さんのジャックと対峙する場面。
ここはCGでも何でも使ってもっと再現度を高めて欲しかった!
テーマとしても見どころとしても、あそこが一番大事な場面で、この映画で一番金をかけるべきところじゃないか?

総評。
今作は全体的に割とカッチリとした手堅い作りで、これはこれで単体として観ればまずまず楽しめた。
でもシャイニング続編としては物足りない。

じゃあシャイニングの何が好きだったのか。

それは話の筋ではなく、キューブリックのリッチで美しい画作り、意味不明で理不尽な恐怖演出、異様な迫力の演者達との化学反応だったんだと再認識。

スティーブン・キングファンは納得しても、キューブリックファンは納得しないという印象。

あと最後に…。猫がすごく可愛い!
俺もあんな看取られ方をしたい(笑)