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ドクター・スリープのIri17のレビュー・感想・評価

ドクター・スリープ(2019年製作の映画)
4.3
スタンリー・キューブリックの『シャイニング』は神がかり的な魅力的なカット、ジャック・ニコルソンの取り憑かれたような熱演などで、映画史に強いインパクトを残した作品であるが、その一方で原作者スティーブン・キングに「エンジンのないキャデラック」と批判されるなど、賛否を巻き起こした作品である。
そしてその不完全な傑作を補完するように約40年の月日を経て作られた続編が本作『ドクター・スリープ』だ。

結論から言うと今作も賛否両論の作品とはなったが、僕は素晴らしい傑作だったと考えている。
正直『シャイニング』という映画を僕は特別面白いと思って観たことはない。それはやはり映画としてあまりに雑だったからだ。『時計じかけのオレンジ』や『博士の異常な愛情』のような明確な骨格がなく、かといって『2001年宇宙の旅』のような想像力を掻き立てるような魅力も感じなかった。言うならば、映画というより絵画の連続を観ているようだったのだ。

しかし今作は序盤からモンタージュ的な流れがしっかりとあり、キャラクターの深みが描かれていた。『シャイニング』が放棄した謎をしっかりと回収してくれて続編としても文句なし。
キューブリックが高尚なものに引き上げた作品をジャンプ漫画のようなバトルものに落としてしまった感は確かにあるが、終盤はしっかり『シャイニング』に戻り、情緒的な美しいラストに昇華したと思う。

マイク・フラナガン監督、グッジョブです!
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