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ある女の愛のryosukeのレビュー・感想・評価

ある女の愛(1953年製作の映画)
3.7
女が男と仕事のどちらを取るかという定番の(そして少し時代を感じる)葛藤をテーマとしたシンプルなメロドラマだが、ウェルメイドな作りと手堅い演出でしっかり見せてくれる。
派手さはないが滑らかなカメラワークのカットが、情感のある緩やかなテンポで繋がっていき、かつ無駄もない。
長閑な島の風景も心地良いし、嵐の海を渡って灯台で手術をするというシチュエーションも良いな。葬式の行列について行く犬。
ちょっと気になったのは肝心の喧嘩のシーンの演技が若干大仰に見えたことぐらい。
何か特筆すべき点があるといった感じの作品ではないが、良いものを見たなという気分にはさせてくれるので満足。
グレミヨンは彼が現役の時代はカイエ・デュ・シネマにスルーされていたということだが、(少なくとも本作からは)はっきりした作家性みたいなものは読み取れなかったので、作家主義を標榜する当時のカイエには無視されたということなのだろうか。
チャップリン「黄金狂時代」のパンのダンスが引用されていた。オマージュ元での文脈を若干忘れていたので、待ちぼうけの場面なんだっけと思ってあらすじを確認したらかなりど直球の引用だった。
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