囚人13号

ファントマの偽判事の囚人13号のレビュー・感想・評価

ファントマの偽判事(1914年製作の映画)
3.9
別題『ファントマ/偽りの長官』。

『ファントマ』シリーズの五作目にして最終回。しかしフイヤード自身まだ続編を企画していたようで、それは第一次大戦の勃発によってそれは頓挫してしまったという。そのためエンディングは賛否あるかもしれない(個人的には尻切れトンボ)。

とにかく怒涛の展開で、逃走/殺人/強請などより脚本とドラマ性が重視されるようになっている。尾行する刑事とファントマの列車内における闘いほか、彼が一人の人物の変装を貫き通すという姿勢はこれまでになく挑戦的で、手の込んだパンフォーカス、クローズアップの挿入といった技法面も含め、図らずとも集大成のような完成度に収まっている。
ただフィルムの欠落部分が少なくとも二箇所あるようで、上手な説明字幕によってある程度シークエンスの想像が可能だがエンディングについてはそうなのか、ただ撮影されていないのか定かではない。

シリーズ中で最もグロテスク、センセーショナル、ショッキング、何と言っても構わないが個人的に大興奮したのが教会のシーン!裏切りとさらにそれを見越しての謀り。しかしファントマを出し抜くことなど誰にもできない。宝石!!!もしここにキネマカラーのような着色がなされていたならば、間違いなく映画史上屈指の名場面となっていたはず。

その後はジューヴの不在によってようやく日の目を見るファンドールが活躍し、ファントマを追い詰めるが、例のエンディング拍子抜けしてしまった。突き放されたような、作品をグレードダウンしているとも言えなくもない幕切れ。
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