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ファントマの偽判事のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

ファントマの偽判事(1914年製作の映画)
3.9
[さよならファントマ!パリを股に掛ける犯罪者ファントマの幕切れ、ファントマと時代の肖像⑤] 80点

本作品はフイヤード版「ファントマ」映画群の第五篇であり、小説第十二巻『泥棒判事』を原作としている。個人的には最もリズムが良く楽しい作品だった。

テルガル侯爵夫妻が金に困り、宝石を売ることになるが宝石も金も奪われてしまう。ファンドールはこれをファントマの仕業と睨むが、当のファントマはベルギーで収監されていた。フランスへの引き渡しに応じないため、ジューヴが彼の代わりとなり、彼を脱獄させてフランスへ入国させることで国内で逮捕することを思い付く。かくして脱獄したファントマは尾行を撒き、乗り合わせた予備判事プラディエを殺害して彼に成り代わる。赴任先のサン=カレではテルガル伯爵夫人を脅して金を巻き上げたり、元部下から宝石をせしめようとしたりするが、ファンドールに気付かれて逮捕される。しかし、プラディエとしての命令で釈放された彼はまたしても逃げ仰せたのだ。

第一次世界大戦によってその後の撮影が中断され、フイヤードは復帰後も二度と「ファントマ」の続きを作らなかった。しかし彼もまたファントマに囚われた人間の一人であり、「レ・ヴァンピール/吸血ギャング集団」「ジュデックス」ではそのファントマ的イメージの変遷を追うことが出来る。フイヤードは1925年に亡くなるまで連続映画を撮り続けたが、大戦前の熱狂を終ぞ取り戻すことはなかった。フイヤードは連続映画の最盛期を生き、その死とともに連続映画も葬られたのだった。

さよならファントマ。

★総括
本作品に決定的に欠如しているのはヒロインの存在である。そして、それを解決したのが「レ・ヴァンピール/吸血ギャング団」だ。私は後者の方がリズムも良く、より適当で好きなのだが、本作品が熱狂的に迎え入れられたのも非常に理解できる。フイヤード、にくいねぇ。
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