三半規管が弱いんだ

海獣の子供の三半規管が弱いんだのネタバレレビュー・内容・結末

海獣の子供(2018年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

海、深海、宇宙など、大部分が解明されていない、未知なるものに対する憧れや畏怖は、誰もが想い描くものであるし、子どものときなら尚更だと思う。それを具体的に映像化したことが凄い。(商業アニメーションは、多くの人に伝えるために、かなり具体的に描かなければならない)しかしそれが故に、現実には起こり得ないことを描く夢のような話になってしまい、どこまでもファンタジーにならざるを得なかった。

宇宙と生命や記憶の構造が似ていて、全て繋がっている、ミクロとマクロを行き来するという多次元的なイメージは、あまり新しいものではないのだが、それを少女の一夏の思い出と成長のストーリーと結びつけることで、より実感として楽しめるものになっていたと思う。

CG技術が多用されていたが、有機的な線に対して手を抜かず、あまりデジタル感が全面に出ていないので、原作漫画の世界観が維持されていた。

私はDVDで見たので、特典映像で久石譲さんのインタビュー映像を見ることが出来た。音楽が、場面や登場人物の感情を説明してしまう単なる効果音にならないような、鑑賞者の想像の余地を残すようなものになるよう心がけていたらしい。具体的でありつつ説明しない、ギリギリ保っている感じが、映像にも音楽にも感じられてよい。

最後に、「あなたでいいんだよ」というセリフに、宇宙に思いを馳せながらも、それと繋がっている個に対する慈しみが感じられてよかった。個は卑小な存在ではなく、その一つ一つが全てと繋がっていた。