風の旅人

マチネの終わりにの風の旅人のレビュー・感想・評価

マチネの終わりに(2019年製作の映画)
4.0
「未来が過去を変える」という深遠な哲学的テーマを下世話な昼ドラ的物語に落とし込んだ作品。
平野啓一郎の原作を『昼顔』の西谷弘(監督)、井上由美子(脚本)コンビで映画化ということで、作品の内容に沿った人選だったと思う。
『昼顔』もそうだったけれど、やっていることは単なる不倫(浮気)なのに、映像の質感が素晴らしくて、芸術へと昇華されている。
このギャップが西谷監督の作家性なのかしら?
反復の演出がとにかく上手い。
三谷早苗(桜井ユキ)の存在感が際立っていて、蒔野聡史(福山雅治)と小峰洋子(石田ゆり子)の間に割り込むシーンや二人の関係を潰すために取るある行動が怖かった。
桜井ユキは完全にアウラを消していて、最初誰だかわからなかった。
早苗の取った行動は人としての倫理を逸脱しており、謝って許されるものではない。
しかしこの出来事が後に、「未来が過去を変える」というテーマを浮かび上がらせ、物語は最高潮を迎える。

出会ってしまった事実は変えられない。
今はそれが辛く感じられても、いつかいい思い出になるような幸せな未来を紡ぎたい。
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