監督の「山崎貴」とは、あの山崎貴と別人じゃないのか?と疑う一作。
山崎貴監督の作品といえば、「SPACE BATTLE SHIP ヤマト」「海賊とよばれた男」などなど、泣けるエピソードを物語の構成関係なくぶちこむといった印象。その結果「映画になってねえ…」と唖然とすることも多いのですが、今回はちゃんとドラマしてます!山崎監督、なにか改心されたのでしょうか?ぶつ切りのエピソードではなく、構成がちゃんと物語全体を動かすことができてます。(まあ当たり前なんですけど)
天才数学者・櫂(菅田将暉)と海軍の猛者たちの丁々発止のやりとりは、なかなか見応えがあって楽しめる一作といえるでしょう。
ただそれでも「マシになった」という感じで疑問は残りますけども。
櫂がはじき出す方程式は、理屈はわかるんだけど「なぜ?」という部分の説明が必要だったのでは?それは物語を盛り上げるためにも欲しかったところで、終盤いきなり結論だけ提示されてしまっては熱くなれない。他にも部品の価格表を手に入れる下りも、もうひとひねりなんとかならんかったのかなあと。ターゲット層が、普段映画を観ない人であろうことを差し引いても、もう一工夫できていれば、と惜しく感じます。
ここ数十年、日本の映画界は
「予算ではハリウッドにかなわない。映像の派手さは負ける。でも物語をつくる能力がある」
というのが自己評価でした。しかし、この映画の迫力あるヤマトの撃沈シーンをみるように、逆に日本映画は「映像はそこそこだけど、物語を作る能力が衰えてきてるんじゃないのか」というのが実状のような気がします。全てがそうではありませんが、「進撃の巨人」「二十世紀少年」など、それはここ10年くらいの、最近のメジャー映画に顕著に表れている日本映画の課題といえるでしょう。
そんな日本のメジャー映画の中心いた山崎貴監督作品が、少しマシになった。でも課題は残った。しかしながら希望は少し見えた…と思いたい。