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アルキメデスの大戦のDcatcHerKのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
4.6
 前情報は、菅田将暉くんが主人公の数学の天才櫂直を演じ、櫂直が戦艦大和に関わっていること、出演者の多くがベテランの俳優さんで、完成披露試写会で舘ひろしさん、橋爪功さんなどベテランの俳優さんたちが菅田将暉さんの演技を絶賛していたことくらいで、どんなストーリーか皆目知らず、日本が誇る戦艦大和に興味があったので、「あまり期待せずに」という気持で鑑賞した。
 しかし、これが、思いのほか素晴らしかった。
 最初に俳優陣。
 すべてのベテラン俳優、海軍大臣大角岑生役の小林克也さん、海軍中将永野修身役の国村隼さん、海軍少将嶋田繁太郎役の橋爪功さん、造船中将平山忠道役の田中泯さん、海軍少将山本五十六役の舘ひろしさん、造船会社社長の大里清役の笑福亭鶴瓶さん、戦艦長門艦長宇野積蔵役の小日向文世さんらの演技が素晴らしい。それぞれの役のキャスティングも絶妙で、役者さんの本領発揮と言った感じなのだ。
 そして、このベテラン俳優に負けていなかったのが、主人公櫂直役の菅田将暉さん、海軍少尉田中正二郎役の柄本佑さんの演技。「新型戦艦建造会議」での、それぞれのベテラン俳優さんとの絡みや、二人の絡み。完成披露試写会でも言っていたが、二人の絡みは「最初は喧々囂々で、段々と熱量が共存していって」という感じの演技がとてもよかった。
 そして、尾崎財閥の令嬢尾崎鏡子役の浜辺美波さん。「君の膵臓をたべたい」でちょっと恋にミスリアスな可愛い女子高生を演じ、それ以来注目している女優さん。いろんな役をやり、こんなベテラン俳優の皆さんと共演して、徐々に幅の広い、深い女優さんに変わっていくのだと期待している。
 そして、ストーリー。
 山崎貴監督と言えば、戦争に関わる映画としては、百田尚樹さん原作の「永遠の0」が有名。
 当時も、「戦争賛美」とか、「戦争の美化」という批判をした人がいた。
 今回も似たような感じで捉える人もいるかもしれないが、「永遠の0」もそうだが、この作品も、もっと大きな視点で、戦争の悲惨さや人間の愚かさ、歴史がどのような“雰囲気”で作られていって、“ああいう”悲惨な結果になってしまうかを描いている。
 歴史的な事実を基にしたフィクションであるが、いろいろ考えさせられる。戦争の責任を、“軍部が”とか“天皇が”と、単純に結論を出す人たちが多いが、江戸時代から明治時代へと続き、欧米列強の植民地支配の脅威、特にソビエトの南下政策、そして、連戦連勝していた日本帝国軍が、日本人全体の雰囲気を戦争へ向かわせていたことなどをしっかり捉えていた。
 どんな小さな事件や事故でも、それが多くの人に影響する戦争でも、実際には、「新型戦艦建造会議」のような限られた人間の判断と、世間の雰囲気により齎せていくということは肝に銘じておくべきなのだと思った。
 最後に、VFXの戦艦大和。これまでの実績が素晴らしい山崎貴監督の期待を裏切らない映像に驚嘆したし、戦艦大和の美しさに日本人としての誇りを感じた。
 最後に、ベテラン俳優さんの演技はもちろんだが、それぞれの深みのある顔に痺れた。年老いて、ああいう深みのある顔になりたいと思うし、いずれ、菅田将暉さん、柄本佑さんが、どんな深みのある顔になるのか楽しみだ。
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