somaddesign

アルキメデスの大戦のsomaddesignのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
5.0
山崎貴作品で初めて面白かった!
史実と虚構のバランスがいいし、結末を知った状態で悲劇の結末に向かうタイタニック式タイムサスペンス。

:::::::::::

日本と欧米の対立が激化する昭和8年、日本帝国海軍上層部は巨大戦艦の建造計画に大きな期待を寄せていたが、海軍少将・山本五十六はその計画に待ったをかけた。これからの海上戦を見据え新型空母の建造を目指す山本だったが、上層部は世界に誇示する大きさを誇る巨大戦艦の建造を支持していた。山本は巨大戦艦の建造にかかる費用試算に疑問を持ち、建造計画の裏に隠された不正を暴くべく、天才数学者・櫂直を海軍に招き入れる。驚異的な数学力と度胸を活かし、不正を暴こうとする櫂の前に帝国海軍の大きな壁が立ちはだかる。

:::::::::::


原作未読。
原作マンガがあることすらエンドロール見るまで知らなかった。
Netflixの野郎が「全裸監督」やデヴィッド・フィンチャーの「マインドハンター」の新シーズンと、次々面白そうなのを配信するもんだから映画館に足を向けるヒマがねえです。


ことごとく山崎貴ガチャにハズレ続けた自分にとって、やっと引けた大当たり!「あれ、面白いぞ? あれれ、まだ面白いぞ?」と思ってるうちに、映画にすっかりのめり込んでしまった。ちゃんと最初から最後まで面白かった😀 直前に見た「DQ your story」でググっとハードルが下がった状態だったのもあるかも。

国威高揚を掲げオリンピックを招致し、その象徴たるスタジアム建設にまつわる騒動に着想を得たという今作。特に当初の試算から大幅に増額している巨額の開催費用の問題は、今作の根底にある醜悪な隠蔽体質に通じて見えて、なんだかこう無邪気に面白がってる場合じゃない気がしてくる。

80年前の話なのに現代日本の風刺映画に見えてくる不思議。や、戦後70年を経て歴史が繰り返されてる or 何も変わってない現状を認識させられるドラマなのかも。結論ありきの益体もない会議に時間を浪費し、ハコモノに血税が注がれ、デタラメな試算で実際は大幅にコストがかかる……って何度もニュースで目にした構造ジャマイカ。

観客誰もが結末を知ってるし、映画冒頭で沈没してく様も見せてくれる。沈む戦艦を国のメタファーにして、亡国の様を見せつける。
無茶な試算を会議までに終わらせる(文字にすると超地味なタイムサスペンスだ💧)、一度は日本を捨てる決意をした櫂が思い留まるシーンが素晴らしい。 焦土と化していく人や街をビジュアルで見せられて、セリフがなくても櫂の憂いを共有できるし、その後この光景が実現してしまう恐ろしさも痛感する。
なにより戦争映画として大切な「戦争って💩以下だ」って気持ちにさせてくれる。キモを外さないバランス感覚が良かった。

フード論者としては、徹夜作業中と東京へ向かう車中の握り飯。前者では櫂と田中の二人が、後者では別々の席で孤独な作業を続ける面々が心一つに奮闘してる描写に活かされていて良かった。(あれだけ大きな握り飯をお茶もなく食べきるの大変そうだとも思ったけど)


天才数学者・櫂を演じた菅田将暉のナイーブで狂人じみた佇まいが良かったし、田中少尉こと柄本佑の真面目で実直な好青年プリと好対照。反目しあう二人が難題を通じて理解し合ってくバディムービーとしても楽しかった。(同じ画面に収まるシーンはないものの角替和枝の遺作で親子共演になったのも熱い!)



数学的な知識がなくても楽しめるのは嬉しいけど、もうちょっと論理で相手をやり込めるシーンが欲しかった。櫂の発見の素晴らしさより、口の上手さで乗り切ったように感じちゃった。
あとアルキメデスはあんまり関係ないような。

75本目