【失敗の王様】
ボリウッド・スターであるサンジャイ・ダットの伝記を元にした、波瀾万丈の物語。ちょっとびっくり。
サンジュ(彼の愛称)は日本での知名度チョー低いですが、サンジュ知らずでも楽しめる娯楽映画に仕上がっており、とてもよかった。幾つか疑問・不満は出るも、面白さが帳消しにしてくれた。涙腺もけっこう、責められました。
インド娯楽映画の王道、家族と友情の大讃歌でした。サンジュの特異な人生を、入り易く普遍化する手さばきがお見事。この監督、やっぱり巧いと思う。事実はかなり加工されたようですが。
人物そのものではなく、エッセンスから再構築したようす。サンジュが結局は、愛される人物なのだと説得されてしまう。実際は、彼のお蔭で人生破滅したような人も、けっこういるように思いますが。
進行はハイテンポ。いちいちド~ン!と鳴るSEが煩いが、慣れると快感となる不思議。
でも一番の魅力は、魅力ある人物がわんさか出てくるところ。曲者が次々登場し、劇的変化を見せるから面白い。
ランビールはやっぱり似てなかった。まず眼の質が違う。が、顔以外は頑張っており違和感なし。
彼を護る、父役パレーシュ・ラーワルと親友役ヴィッキー・コウシャル、この二人の厚み・熱みがすごい。
セクシー要員もいるが、今回ベストヒロインはサンジュ母でしょう!マニーシャー・コイララに泣いた!
一方、アヌシュカは華を添えた感。ちょっと不満は、元カノ・マードゥリー・ディークシトを登場させてほしかったこと。誰が演じても、踊ったら見劣りしそうですが。
サンジャイ・ダットの影には、出来過ぎた父親による重圧があったのですね。しかしその父も、始めから歩み寄よろうとするのに、近寄れない…。ジレンマの普遍化が巧い。
当時の映画撮影現場へえー、に始まり、薬物、ギャング、スキャンダル、そして暴動・テロ勃発の余波…ホントに波瀾万丈。伝記執筆が叶うか?という構成が効いている。
最後にご本人もオマケ出演していますが、驚くほど枯れてますね(笑)。
まだ存命中の人ばかりだから多分、各所調整はかなり大変だったと思います。それでもここまでの完成度なら、拍手モノだと思いましたよ。
<2019.6.21記>