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15年後のラブソングのSPNminacoのレビュー・感想・評価

15年後のラブソング(2018年製作の映画)
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同じくニック・ホーンビィ原作『僕のプレミアライフ』や『ハイ・フィデリティ』をGF側視点にした感じ。ローズ・バーンの立場はよくわかるし、でも面倒臭いクリス・オダウド側にも身につまされるし、今だにエモいイーサン・ホークにも…結局あの3人共身につまされてしまった。
過去のマイ・アイドルに執着するダンカン、父の残した博物館でくすぶるアニー、何もかも封印して逃げたタッカー・クロウ。それぞれ気がつけば伝説のコレクション、地元の古い収蔵品、ぞろぞろと増えた子供に囲まれて、ミッドエイジ・クライシス。「何もなかった64年の夏」にも大切な思い入れがある、けどそうやって失われた時間が惜しい。こんなはずじゃなかった、でもまあこんなもんか…と、くたびれた苦笑いをするアニーとタッカーの波長が重なる。
「もうそんな気持ちじゃない」と、苦い後悔や移り変わる心境はすぐ過去になる。もう若くないし、新譜は傑作じゃないとしても、封印することはない。子作りに誘う件のダイアローグが妙に堅苦しく可笑しいのは、脚本にタマラ・ジェンキンスの名前があるせいか。
倦怠感を顔に滲ませたローズ・バーンがとても良かった。ヲタクのエゴは厄介だけど、「俺にとっては大切な傑作」と言い切るクリス・オダウドはやはり他人事でなく憎めない。しかし何と言ってもイーサン。『リアリティ・バイツ』がそのままおっさん(いや既におじいちゃん!)になった現実…これほどの説得力はないだろ。如何にもオルタナ&グランジ時代にありそうな、でも傑作かと言われればうーん…って微妙な塩梅の劇中曲(ウィルコとか錚々たるミュージシャンが楽曲を提供)、へなちょこなヴォーカル、“Waterloo Sunset”のセンチメンタルな弾き語り。
でもって、タッカーの息子は『マリッジ・ストーリー』のアジー・ロバートソンくん。可愛すぎて、「無償の愛を感じたい」アニーが放っておけないのもそりゃそうだろう…と、これまたすげえ説得力。
そして、これもさりげなく『めぐり逢い』案件であった。あの本はたぶん「チャリング・クロス街84番地」だし、遠く離れた文通=メール友が待ち合わせするが…という。文章の方が上手く話せる、他で言えないことも言える、そんな関係を構築できるのは粋。