horahuki

マンディ 地獄のロード・ウォリアーのhorahukiのレビュー・感想・評価

4.2
これはすげぇわ…
映像がめちゃんこカッコイイ怒涛のグチャドロ復讐劇!ニコラスケイジの顔芸もあるよ!

だけど、リベンジバイオレンスの謳い文句からは想像もつかないほど超スローペースかつ映像で魅せるアート寄りな作品で、万人ウケは絶対にしないので見にいく方はご注意を!!

監督の前作『Beyond the Black Rainbow』は海外版しか出ておらず、しかも英語音声・スペイン語字幕という私では絶対理解できない仕様。そのため予告編だけ見たのですが、その強烈な色彩感覚と映像センスに本作への期待が膨らむばかり。実際期待以上の狂いまくった作品で、大満足でした♫

本作は物語的には非常にシンプル。カルト教団に妻を誘拐・殺害された夫(ニコラスケイジ)がボウガン(名称は死神)とオリジナルの大鎌を携えて単身復讐に乗り出すというもの。しかしそんな単純なストーリーを肉付けするのが監督の作家性全開な圧倒的映像表現であり、良くあるリベンジバイオレンス映画とは一線を画している。美しくも毒々しく、幻想的だけど悪魔的。そして禍々しさをも感じさせるその映像は、「映像麻薬」的な呼ばれ方をするのも納得な唯一無二な世界観を創出している。

赤青黄等、ビビッドな色彩の照明が幻想的かつ異空間のような雰囲気を醸し出してるんですよね。これらの照明に照らされた煙(ドライアイス?)が画面中に充満する演出は巨匠マリオバーヴァの作品を見ている時に感じる感覚に近い気がします。中でも、バイカー集団ブラックスカルズ初登場時の息を飲むかのような美しくも邪悪さを感じさせるシーンがめちゃくちゃカッコイイ。ただのジャンキー野郎たちなのに、そういった常識から逸脱した映像表現によって、本当に魔界から悪魔が召喚されたのかと思わされる。ブラックスカルズが『ヘルレイザー』の魔導士たちを思わせるような外見をしているのも、悪魔としての存在感を際立たせてますね。

作中行われてることはB級バイオレンス映画そのものなんだけど、本作はカメラ・演出による贅沢な「間」とヨハンヨハンソンのダークで重厚なサウンドが相まって、ワンカットワンカットが非常に重みをもって観客に訴えかけてくる。物語的にはなんでもないシーンでも「何なのかわかんないけど、とにかくトンデモナイものを見せられてる」という感覚。

セリフも少なめで、映像やキャラクターたちの表情・行動等により過不足なく情報を提示していく練られた演出・脚本もとても丁寧で、どこまで意味を持たせているのか初見では判断できない思わせぶりなセリフの数々も、この映画が纏う「只者ではない」という感覚を助長させる。

そんな感じで、とにかく圧倒される映像で魅せるハード目な作品なんだけど、シュールな笑いがところどころで唐突に挟み込まれるから良い感じに気が抜けるんですよね。ニコラスケイジの顔芸は劇場が沸いてたし、元グリーンベレーと言えばこの人!なビルデュークの強烈なキャラクターも笑いました。まさかのクリスタルレイクが舞台なのも(笑)こいつらJ先生のご近所さんかよ。よく今まで生きてたな。そんで、『地獄のモーテル』(というより『ファンタズムⅡ』)を思わせるチェーンソーvsチェーンソー(片方めちゃくちゃ長い笑)のアクションとか独特な色彩をバックにしたグチャドロゴア描写のインパクトも凄まじいんだけど、どこか笑えるんですよね。

ニコラスケイジの狂った演技が話題を呼んでいますが、同じく今年公開されたバイオレンスホラー『マッド・ダディ』でも狂いまくってたから今年のニコケイはヤバイっすね(笑)夢とも現実ともつかない映像の凄まじさやドラッグムービー的な倒錯感も含めれば本作の方が圧倒的なんだけど、単純な狂い度では『マッド・ダディ』のニコラスケイジには敵わないんちゃうかな。でも、どっちも楽しそうに演じてて何よりです(笑)今後もどんどん狂った演技で楽しませてください!
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