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スヴァネティの塩の小のレビュー・感想・評価

スヴァネティの塩(1930年製作の映画)
4.0
2018年10月に岩波ホールで開催の「ジョージア映画祭」にて鑑賞。無声映画時代を代表するドキュメンタリー。

検閲で当局によって破棄された劇映画の未採用フィルムと個人的に撮っていた映像を加えて再編集した作品が<映画史上の傑作と評価さるようになった>という、諦めの悪い人が最後には勝つみたいな映画。

ジョージア北西部のスヴァネティ地方のウシュグリという村が舞台。この村の標高は2410メートルとヨーロッパで最も高い。ただでさえ物資の調達が困難なのに冬は雪に閉ざされる。

9世紀から12世紀にかけて独特の塔が築かれ、他の地域との交流もあまりなかったみたいだけれど、歴史的に外敵から逃れる場所という役割もあったのかな? 過酷な場所が故に、他地域の羨ましくなるような情報を隔絶する意味もあったのではないかという気もする。

映画は岩山の重労働、冷害、雪崩による死、貧富の差など厳しい状況が描かれる。特に印象的だったのが、塩分のあるものなら何でもなめまくる動物の姿。深刻な塩不足の状況が一目瞭然。

妊婦を不浄とする因習がもたらす不幸の描写は胸に迫るものがある。この姿が嫌だから、子どもは欲しくないとする女性がいるのも納得。

現在、ウシュグリ村はヨーロッパ最後の秘境で村全体が世界遺産、そして「ラピュタな世界」な人気の観光地らしい。映画が過酷一辺倒なことになっているのは、こんな状況を社会主義政権がインフラ投資で何とかしますよ的なプロパガンダを入れざるを得なかったからかもしれない。
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