足拭き猫

岬の兄妹の足拭き猫のレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
4.2
Rising Filmakers Project
障碍者や底辺にいる人々をこんなに明るく描いて良いのか、という意味では物議を醸し出しそうで間違いなく問題作。

知的障害を持つ妹と足に障害を持つ兄。工場をリストラされたのを機に金に困った兄は、ある出来事をきっかけに妹に次々と売春をさせるようになる。

暗いテーマなのだがそれをみじんも感じさせない。つい笑っちゃう場面がたくさんあって、松浦祐也さん演じる兄は終始目をくりくりさせ、妹にひどいことをしているのに全く憎めないキャラクターだし、本能のまま生きる和田光沙さんの妹はしたいことをして何が悪いんじゃ、と言わんばかりの無垢が神々しい。

松浦祐也さん、和田光沙さんと映画界を引っ張っていっている役者さんたちが素晴らしいし、その魅力を引き出したという点では「万引き家族」の是枝監督に通じるものがあるのではないか?と、これからの片山慎三監督がめちゃ楽しみです。

住めればいいという家の中は物がごっちゃりあって、ケンカしている時に散乱したゴミにけつまづいて転んでしまったり、輪ゴムと食べ物のクズが並んで落ちている床などディテールに抜かりがない。

外からの目を避けるように窓が段ボールで覆ってあったのが、それを剥がす行動に精神の解放を感じさせる美しい場面。時々見せる和田さんの大人びた表情にどきりとして、その時の空気感がまた素敵な具合。

上映後、白石和彌監督とのトークメモ。
アップからの画面の引き、計算されつくした光の使い方への誉め言葉、松浦さんと和田ちゃんをずっと観ていられる幸せ。
生活保護は受けないのかとの疑問に、片山監督は社会に対する批判にはしたくなかったと。