深獣九

岬の兄妹の深獣九のレビュー・感想・評価

岬の兄妹(2018年製作の映画)
3.5
大好きな作家の赤松利市先生が絶賛されており、興味が湧き観た。
この手の作品に触れると、いつも感じることがある。それは、何も言えないということ。どんな言葉を紡いでも、自身の吐き出したものがすべて空虚で嘘っぱちと感じる。この『岬の兄妹』もそうだった。

妹に売春させた兄を責めることはできない
貧困がすべての元凶などと言えば上っ面
買う方が悪いなんて自己責任をかざすのは卑怯が過ぎる
その前にまず生活保護や役所を頼るべきなんてお前何様
かといって憐憫の視線を向けるのは恥ずべき偽善者

90分間、ただただ兄妹の生きるさまを凝視していた。どういう気持で視ていたかなんてわからないけど、目を逸らしちゃいけないと思った。

ネットの記事で読んだことがある。この日本において、餓死する人がいるという。物があふれて大量の食品が廃棄されている時代に。制服代や給食費が払えずに、義務教育を受けられない子どもがいるという。日本は豊かな国ではないのか。いや、ずいぶん前からそれは幻想とわかっていた。でも、これほどまでとは思わなかった。勉強不足を恥じ入る。

もし、現実を知ることでなにかが救われるのなら、この作品を観た意味となるだろう。
そうであってほしい。なぜなら、私は何もできないのだから。
ただこの作品に寄り添い、彼の言葉に耳を傾けるだけでよいのなら、私は救われる。
せめて、電子の書庫に想いを残す。
深獣九

深獣九