Ricola

ケトとコテのRicolaのレビュー・感想・評価

ケトとコテ(1948年製作の映画)
3.5
ジョージア映画祭にて鑑賞。
実は数年前に鑑賞の機会があったものの逃してしまったので、今回は満を持して岩波ホールにて観ることができて感無量である。

身分違いの恋を主題にした作品だが、最初から最後まで至って明るい雰囲気で物語は展開される。
ご都合主義な展開は否めないが、その要素も含めたうえでのロマンティックコメディミュージカル映画なのだ。


ケトとコテという若い男女の恋愛模様が、春の訪れの美しさとともに華やかかつ初々しく描かれる一方で、二人の結婚をめぐって繰り広げられる「抗戦」において身分差や上流階級への皮肉が大いに盛り込まれている。
その戦いでは、ケトの父親の側近二人組であるシコとニコのコンビがこのロマンス喜劇をドタバタと盛り上げてくれる。
また、明らかに偽物だとわかる変装で敵の目を欺く人物まで登場するなど、わかりやすく楽しいシーンが多い。
急な主観ショットや申し訳ない程度のアクションつなぎも、もはやギャグのようにどんどん繰り広げられる。

一方でオペラ調の美しい歌に癒やされる。
春のキラキラとした気候のなかで歌い、柔らかく舞い踊る女性たちのシーンや、コテがケトに愛を歌うシーンなどが特に印象深い。後者に至っては愛を伝えるシーンなのに、ケトとコテがふたりきりになれないのが面白い笑
というのも、バックコーラスとしてのコテの仲間の男性たちが多いからだろう。
このような違和感さえも、コメディとして昇華されている気がする。

身分違いの純愛、階級社会への皮肉やドタバタコメディなど、時代や国、文化を越えて楽しめる要素が満載な作品であった。
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