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おかえり、ブルゴーニュへのshironのレビュー・感想・評価

おかえり、ブルゴーニュへ(2017年製作の映画)
5.0
人もワインも熟成するには時間が必要。
ワインの楽しみ方が変わる映画!

国も立場も、私とは全く違う三兄弟だけれども、それぞれが抱える悩みには共感出来る部分が多くとても身近に感じました。
父親が倒れ、家業について考えざるを得ない状況になるのですが、土と向き合う事でドメーヌとしての継承を知り、今の自分を受け入れたうえで下す決断はとても清々しい。
ずっとこの三兄弟の行末を見ていたい…自然とそんな気持ちになりました。

冒頭で、主人公がなぜ家に戻ることになったのか?なぜ家を出ることになったのか?が簡潔に語られるのですが、
少年が青年に成長する時間の切り取り方が素晴らしく、完全に引き込まれました!
毎日の繰り返しを単調に感じてしまう青年の苛立ちや親への反発は、誰もが多少は身に覚えのある感情ではないでしょうか?
そして、10年経ったからこそ故郷で見えてきたものは、自分の内なるルーツだったり、パートナーとの関係だったり、同じ立場になって初めて見えてくる親の愛だったり。(T^T)

四季を通してワイン造りの工程も描かれるのですが、雪の積もった葡萄園は初めて見る景色でした。
オートメーション化されず手作業の部分や、成分の分析結果を参考にしつつも、経験に基づいた人の感覚で見極める部分が多く、それは紛れもなく一家が受け継いできたもの。
それぞれのワインが持つ個性にも興味が湧きました。

葡萄の木は寿命を過ぎると実をつけなくなるそうです。
父親が反対して抜かせなかった祖父の葡萄の木。
きっと彼らも40年後ぐらいには、父親の木を切ることに反対する日が来るのではないかと思いますが
新しい世代が、新しい木を植える事も必要。

父親はワイン造りと同じように
三人の性質から、何年も先の子供達の熟成を見極めて
長男には、経営者としての責任を
長女には、職人としてのセンスを
次男には、時代に合った革新を
期待したのではないでしょうか?

ワインを飲む度に、この映画を思い出して
「これは何曜日の葡萄かな?」「どんなドメーヌが作ったワインなのかな?」と妄想する楽しみが増えました。
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