回想シーンでご飯3杯いける

ダンスウィズミーの回想シーンでご飯3杯いけるのレビュー・感想・評価

ダンスウィズミー(2019年製作の映画)
3.8
僕には日常生活の中で楽しい事があると、会話にメロディが付いてしまったり、踊るような身振りを加える事が当たり前のようにある。なので、ミュージカル映画を観て「突然歌いだす」と感じた事はあまりない。

しかし、本作の主人公は「突然歌いだす」ミュージカルが苦手な女性。それが催眠術によって踊ってしまう体に変わってしまうという、いかにも日本的なストーリーで、観る前から文句を言う気持ち満々だったのだが、いざ見始めると、、、、結構良いじゃないか!

まず、最初のダンスシーンから「雨に唄えば」のドナルド・オコナーへのオマージュ(ジーン・ケリーではない所が心憎い!)が含まれていて、ミュージカルへの愛と本気度がひしひしと伝わってくる。

そして、三吉彩花の日本人離れしたスタイルとダンス・パフォーマンスの豪快さ! 今時の女子というよりは、NHKの連続テレビ小説に出てきそうな真面目っぽい人物設定。そんな彼女が、催眠術によってダンス・パフォーマーに豹変する様子が、コミカルなんだけど実は大真面目で、音楽やダンスが好きな僕としては、嫌うどころか胸熱要素しかない。

三吉彩花が踊るシーンの大半は、周囲が冷ややかな目で傍観する設定なので、撮影時は精神的に相当きつかったと思うのだが(プレッシャーから入院してしまった時期もあったそう)、まだ新人の彼女がやりきった事にも感動してしまう。

逆に、青函連絡船のシーン等、取ってつけたようなコメディ・パートはいらなかったように思う。前作「サバイバル・ファミリー」も同じように感じたのだが、矢口史靖監督は、そろそろ小ネタで笑わせる手法を止めるべきではないだろうか。

懐メロに寄り過ぎた選曲も微妙ではあるが、「ウェディングベル」のシーン等は「歌わずにいられない」シチュエーションがミュージカルの面白みを上手く表現しており、入門編として良くできていると感じた。催眠術が解けた後の着地点も良い。飛びぬけて高評価というわけでは無いけれど、応援したくなるタイプの意欲作。鑑賞前に穿った目線で見てスマンかった。