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隣の影のRのレビュー・感想・評価

隣の影(2017年製作の映画)
4.5
おおお期待以上におもしろかった!!! オープニングからおもしろい! 真夜中お隣から激しいSEXの音と声が聞こえてきて迷惑してる夫婦……と思いきや、どうやら夫の方は催してきたらしく、ポルノ見ながらひとりシコシコ……のはずが、とつぜん奥さんが起きてきてスクリーン見たら、夫が元カノとやってる動画ではないか! ブチギレた妻はヒステリックに夫をうちから締め出し、ぜんぜん話さしてくれない、娘とも会わせてくれない。なので、とりあえず実家に戻ると、どうやら実家では隣人との関係が悪い様子。こちら側の木が隣のバルコニーに影を落としてるから剪定してくれ、と、けどこっちはそれしたくないってことで、お互いの奥さん同士が恐ろしく険悪。ある日、車のタイヤが4つともパンクしてて、飼ってる猫が帰ってこなくなたことで、隣の人を疑い始め、いよいよ不和が表面化、とんでもない事態になっていく……!って流れで、じわじわと異常な不穏さの立ち込める張り詰めたムードが最高。はじめは隣人同士のいがみ合いがメインテーマなのかなと思わせておいて、実は、家族という最も近しいはずの人間関係ですら、まったく希薄で脆弱なものであり、てか、そもそも人間同士の信頼ってものがこの世に存在しなくなってしまってる、そんな現代人の姿を描いていく。家族で無理なんやったら、家族以外の人間と良い関係を維持するなんて無理なの当たり前だなって、だんだん感じられてくる。人間と人間の関係についてホントいろいろ考えさせられる。毒々しいエンターテイニングなストーリーテリングを大いに愉しみながら、この問題の根本は一体どこにあるんやろ、と考えてた。最初は、一家の長男が何年も前に失踪してて、おそらく死んでるだろうとみんな言ってるのに、それを認められない母の悲しみにあるのだろう、と思って見てるんやけど、だんだんと、いやちょっと待てよ、そもそも長男が失踪した原因がこの家族にはあったんだよな、と。で、さらに観察してると、表面上の愛想のよさの下で、お互いに対する愛やリスペクトが枯渇しているのが見えてくる。自分が人間として存在している、相手がこの世に共に存在しいてる。そういう根本的な驚異があまりにも当たり前になりすぎて、感謝の念とかが消え失せ、恐ろしく傲慢になってしまってる。相手の存在自体をアプリシエイトすることができないから、代替となる価値で空虚な仮初の幸福感を得ようとする。たとえば、木の話。あんなもの、人間が互い同士のなかに最大の価値を見出していれば、どっちだっていい問題だし、夫が昔の女で抜き始める前にそもそもふたりはもっと幸せなはずやし、そうであれば夫が前の女を見ながら抜いてても、アホやなコイツ、くらいで済む。そういうレベルでの人間軽視のトレンドが世界的にできあがってしまってる。一体なんでこんなことになってしまったんだろううか、って考えずにはいられない。科学的客観性、解明できないことの方が何億倍も多く、むしろそっちの方が何億倍も重要なのに、そんな狭窄なものに人間の世界観が支配されていること。物質的繁栄による他者との協力関係の不要性から生まれる個人主義、とか、まぁ挙げ始めるとキリがないので割愛しますが、やっぱ何にしろ行き着くのは、自分が存在してるってことが当たり前になりすぎてる、ってことなのかな、と思った。なので、この寓話的作品ほど極端ではないにしろ、多くの人の人生に同じような片鱗がたえず存在しており、そこに対する恐怖や不安や緊張感が、ますます人間への信頼を喪失させる拍車となって、数人の小さな世界だけを守るという極端に狭い視野に人間を押し込んでいるのではないだろうか。けどその小さな世界すら守れない。てか、自分すら幸せにできない。とかいろいろ考え込んでたら、後半、戦慄のワンコ事件の後、あれよあれよと衝撃的な展開が続き、悲劇の連鎖がノンストッパブル、そしてクライマックスはいよいよ大興奮のバトル! 勝つのはどっち⁈ ひえええええ!!! イタイーーーーー!!! からの、えっ!!! えええっ!!! えええええっ!!! 面白すぎてラスト数分、何度も見てしまいました! 冷ややかな映像、冷ややかな空気、不穏なエレクトロサウンドなどなどいろいろ最高! アイスランドの映画って多分はじめて見たけど、これは面白かった! また見たい! てか、監督とかキャストの名前の欄のカタカナ、すごいな。アイスランドってこんな感じなのだね。
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