むっしゅたいやき

グロムダールの花嫁のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

グロムダールの花嫁(1926年製作の映画)
3.5
“形式”の必然性に疑問を呈した寓話。
カール・Th・ドライヤー。
ドライヤーがノルウェーに於いて短時間で撮影したメロドラマである。

本作の筋は簡単で、其れのみを追うならば「小作人の息子と地主の娘のラブロマンス」と言えば粗方予想もつこうかと思われる。

然し本作の撮影時期は彼の『あるじ』と『裁かるるジャンヌ』の過渡期であり、単に“ドライヤーにしては珍しいメロドラマ”と捉えるには惜しい作品であろう、と云うのが私の率直な感想となる。

前作『あるじ』でドライヤーは伝統的家長制度の空虚さを、後作『裁かるる…』では既に形骸化した宗教裁判の体制を描いている。
共に底流するのは『形式への忌避感』であり、個人的に本作にも其れは通底していようかと思われる。
主人公二人の身分格差は基より、父親の専制─。
これ等は単純な“悪”として描かれるが、私には物語上“善”として描写される牧師の言の絶対さ、婚礼の為の同道儀式と云ったものに迄、この忌避感は及んでいる様に感ぜられた。
牧師の言は強く反論を封殺、抑圧してしまい鬱屈させる。
また同道儀式を無理に遂行しようとした結果、主人公は命を危機に晒す。
共に社会的な抑止力となる「形式」が、他方用い方を誤れば(言葉が過ぎるが)「暴力」ともなる様を表している、と云うのは穿ち過ぎであろうか。

色々雑感を記したが、プロットも単純な寓話様の物語である。
少女が駄々をこねる微笑ましい「足踏み」だけでも観る価値のある作品であろう。
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