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この世界の(さらにいくつもの)片隅にのめるのレビュー・感想・評価

4.9
すずさんが遊郭で出会ったリンさんとの交流を膨らませた『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』。

250カット、約40分くらい前作より追加されただけで恋愛要素が増し増しになっている。
そして、戦時下の日常も多めに見られるから非常に見応えがある。
168分もあるから2回に分けて観ようかと思っていたのだけど、面白くて通しで観てしまいました。

すずさん、周作、リンさん、哲、4人の想いが交錯するが、すずさんが"口をつぐむ"ことでがんじがらめになることもなくそのまま日常が続いていく。

結婚式で周作のご飯が進まなかった理由はそういうことだったのか。私はただ緊張していただけかと…。
すずさんを哲のところに行かせる周作に何を考えているんだと思っていたけど、この映画を観て気持ちが分かってしまった。すずさんを試していただけじゃなくてリンさんのことで罪悪感があったのか…。

すずさんと周作とリンさんが一瞬だけ同じ場所に集まるが、周作とリンさんの関係はあくまでも過去。これが大人の恋愛か。

雪の日の遊郭で出会った肺炎の女の子に南国の絵を描いてあげるすずさんが良かった。あの労働環境は無くさなければいけないよ…。

最後に孤児の女の子を引き取ったことでリンさんの二の舞にならずに新しい未来が開けるんだと感じて希望が持てた。

すずさんとリンさんが桜の木に登ってお話をする場面が美しくてとても好き。
すずさんに紅を塗ってあげるリンさん。その紅を大切に持ち歩くすずさん。

かなりの死者が出たらしい戦後の台風、すずさんの妹や日傘の女性の原爆の後遺症などもしっかり描いていて戦争中だけの物語にしていないのも良い。
戦後の日常も描いていることによってみんながこの世界に実際に生きていてこの先もさまざまな日常が続いていくのだと感じられる。

戦争と共にリンさんは消えてしまったけど、すずさんと周作がいつまでも末永く幸せでありますように。

まだまだおかわりができる作品です。
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