群青

この世界の(さらにいくつもの)片隅にの群青のレビュー・感想・評価

4.3
映画館行けば良かったー。

元の映画も素晴らしかったんだけどこっちはこっちでやっぱり素晴らしい。
というか前作でも内容が詰まりに詰まっておりそれでいてテンポが恐ろしくいいので鑑賞カロリーは元々高かった。なのに今作は前作からオミットした部分を付け足し160分越えのため、カロリーがさらに高くなっている。疲れた笑
いやほんといい映画なんだけどね。


最初の劇場版でオミットされたのはすずさんと友達になるリンさんとの関係。
当初映画を観た時は原作を読んでおらず、鑑賞後読むとこのリンさんとの関係こそが重要な部分だった。ただこれが結構ドロドロなので、映画としてやりたいこと、つまりその時代に確かに生活していた庶民、生活することで戦っていた人たちを描く、という点から考えるとオミットせざるを得ない部分だったのだろう。
だから最初の映画のメッセージはそれはそれでしっかり伝わるように出来ている。
今回はテンポ感は前回より落ちるもののやり切ることはやりきっているのでこっちはこっちで凄い。
監督の脚本・編集が絶妙だと再認識。
もはや全く別のストーリーと言っても過言ではない。
というかこれ、原作既読の方は最初のバージョンはうーんとなった人もいるのではないか?それくらいリンさんのエピソードはこの作品の根幹部分だった。


じゃあその根幹部分から伝えたいことがどう変わったかというと、すずさんの心情より分かりやすくなったため、感情移入しやすくなった=ドラマが増したということ。
戦争で時代に翻弄された女性から、夫の家族という既に形成された社会集団に放り込まれる女性の心情、というのが強くなっている。
もちろん戦時下の暮らしという部分はやりつつ夫である周作さんへの想い、幼なじみへの想い、リンさんとの友情とコンプレックス。自分の抜けている性格とそれだけじゃ生きていけないこの世界、というもう考えただけでぐっちゃぐっちゃになりそうな心情の移り変わりを観ることができる。そりゃハゲにもなるわ!笑


正直観る前はオミットされていた部分を詰め込んでも映画的には蛇足になるだけでは?と思ったが前作以上のパンチを喰らいました。

参りました。ハイ。傑作です。
群青

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