柊

この世界の(さらにいくつもの)片隅にの柊のレビュー・感想・評価

3.8
驚くほど評価が高くて、低評価付けたら人でなしと言われそう。

戦争をドンパチじゃなくて、市民の目線から捉えたこうの史代さんの原作が素晴らしいんだと思う。
「夕凪の街、桜の国」実写版でも思ったけど、彼女の漫画はいつも被害を受ける方に寄り添っている。その視線は常に変わらない。だからある意味安心して作品に身を委ねられる。
国と国の戦争だけど、末端の被害は人間一人ひとりに降りかかってくる。でもその人間一人ひとりに人生があるって言う視点。粗末に、十把一絡げに扱われていい人生など存在しないと言う視点だ。

最初に満席のテアトル新宿で、立見で前作を鑑賞して、久しぶりの立見だったから(今時立見させるんだと言う驚きもあった)年齢のせいもあって、今ひとつ素直に称賛の嵐とはならなかった私。
バケモノにさらわれるシーンのサイズ感がどうしても納得できなくて…
そして、テレビで実写版を見た。こちらはキャスティングが見事で、物凄くリアル感があった。特にお姉さんと子どものはるみさん、映画にはない、すずさんと同世代の友達との交流。すずさんがお嫁入りしてから恋をする周作のイケメンっぷりとか。(笑)さらに今回追加されたリンさんのお話。
なので私の中では、前作がすっかり実写版に書き換えられてしまっていた。
それがあるので、久しぶりに聞くのんのすずさんは、甘ったるくてはるみちゃんと呼ぶ声が、はるみさんなら良かったなぁとかついつい不満を持ってしまう。

もちろん今作が悪いわけではない。このアニメならではの柔らかい表現が、名もなき市民の当たり前の日々を丁寧に捉えている様は素晴らしい。
柊