柏エシディシ

この世界の(さらにいくつもの)片隅にの柏エシディシのレビュー・感想・評価

4.0
片渕監督舞台挨拶つき川越スカラ座にて。

単なるエクステッドエディションでは無かった。
違うテーマを帯びた違う映画になっていた。
オミットされていたリンさん、テルちゃんのわずかなエピソードを補完しているだけでこうも物語の印象が変わるのだから、この作品が本来持っている豊かさを思う。
より、あの時代に生きた1人の女性としてのすずさん個人としての葛藤や、あの時代に生きていた人々の在り様に厚みと、また違った角度から光が当てられた映画になっている。

「この世界から居場所が無くなるなんてことは、無い」という台詞は、今世界中で注目されたり評価されている映画たちと見事に繋がっている。
映画は声なき人の声でなければならないとはケン・ローチの言葉。

また、技術面ではサウンドエフェクトで格段の進化がこの3.4年であったとのことで、たしかに爆撃シーンの迫力や恐怖はより増していた。

片渕監督がテーチインの際「日本ではこの映画の世界は70年前のものと思われているけれど、海外ではいまだなお近い過去、今目の前の現実として存在している。
防空壕で震えてるすずさんや晴美ちゃんと同じ境遇にいる人々が今この瞬間にもいることを私たちは忘れてはいけないと思う」と仰っていた。忘れないでいよう。
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