ぐりこ

mid90s ミッドナインティーズのぐりこのレビュー・感想・評価

3.8
超エモい。
背伸びするガキんちょもスケボーカルチャーも流れる音楽も、90年代に青春を過ごした人間にはたまらないやつ。いや、過ごしてなくてもきっと伝わる。

抑圧され大人しかった主人公スティーヴィー少年が、スケボーショップで見かけた"少し悪そうでかっこいい"少年たちに憧れて近づこうと、一歩踏み出すことで物語は始まる。
PixiesのWave of Mutilationがハマる。
仲間入りすると、秘めていた度胸と生来のかわいさでグループでも存在感を発揮し、特にリーダー格のレイにかわいがられる。仲良くなるにつれて、仲間たちのそれぞれ抱える問題にふれたり、時にはケンカしたりしながら、スティーヴィー少年は成長していく・・・。

と、物語の筋は平凡かもしれないけど、それぞれの登場人物の丁寧で繊細な描写こそこの作品の魅力だと思った。
スケボーが一番うまく兄貴肌のレイ、酒浸りで無茶苦茶だけど寂しそうな目をしたファックシット、スティーヴィーの台頭に嫉妬するルーベン、ずっとビデオを回してるおバカなフォース・グレード(4年生笑)。悪く見えるけど根はいい奴ら、全員に息が吹き込まれてスクリーンに確かに"存在"してた。
そして誰よりも共感したのがスティーヴィーの兄貴イアン。長男ゆえのプレッシャーにさらされながら、内気な彼は弟へ当たって何かを維持してる。長男コンプレックスを抱える自分は圧倒的に「わかるよ」てなった。それが弟のツレにケンカを売られてすごすご逃げるなんて・・・察するに余りあるよ。ぷつんと糸が切れたように泣き叫ぶイアンは最優秀助演賞ものだった。
このイアン役のルーカス・ヘッジズ、チェックしてみたらマンチェスター・バイ・ザ・シーのパトリック君だった。そう、バンドとサッカーやってて彼女が2人いるのに不思議と嫌味がない、絶妙のバランスを成立させてた、あの子だ!


終盤のスティーヴィーとレイが朝まで一緒にすべるシーンはほんと美しかった。バックに流れるモリッシーがまた破壊力抜群。
最後を飾るフォース・グレードのムービーは本当にただの日常の切り貼りで、そこが“小4”らしくてグッときた。
それと兄貴の部屋に忍び込んでCDをメモするスティーヴィー、一瞬のワンシーンに兄弟のすべてが詰まってるってくらい秀逸だった。世界中の次男が「あれは俺だ!」てなったと思う。

そう、この映画は登場する男の子たちがみんな生きていて、観た人みんなが「これは俺だ!」って共感する作品なんだ。
ぐりこ

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