映画の道化師KEN

mid90s ミッドナインティーズの映画の道化師KENのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

自由を求め、少年たちは板に乗る

監督はジョナ・ヒル。主演は「ルイスと不思議の時計」のサニー・スリッチ。加えて、「スティーブ・ジョブズ」のキャサリン・ウォーターストン、「ハニーボーイ」のルーカス・ヘッジズ、「WAVES ウェイブス」のアレクサ・デミーらが共演する!

シングルマザーの家庭で育った13歳の少年スティーヴィーは力の強い兄に負けてばかりで、早く大きくなって見返してやりたいと願っていた。そんなある日、街のスケートボードショップに出入りする少年たちと知り合ったスティーヴィーは驚くほど自由で格好良い彼らに憧れを抱き、近づこうとするが…

俳優のジョナ・ヒル、初監督作品。1990年代半ばのアメリカ・ロサンゼルスで暮らす、気弱な少年スティーヴィーが気のいいスケボー少年たちと出会い、退屈な日常に新たな楽しみを見出していく青春劇!

この作品の見どころは1990年代の世界観とその時代のリアルを徹底的に再現しよう点にある。その当時の流行であるスケボー、スーパーファミコン、ファッション、曲に至るまで90年代のポップカルチャーを余すことな描写し、この時代を過ごした大人たちは懐かしい青春時代を思い出すことだろう。更に、1995年製の魚眼レンズと16mmフィルムを使用し、当時の空気感を呼び起こそうとするジョナ・ヒル監督の飽く無きこだわりにも注目。スクリーンいっぱいに広がる独特のざらつきと、古めかしい質感が渋くて、最高だ!

また、タバコ、酒、女、ドラッグなど10代にはタブーとされる描写を惜しみなく作品に盛り込むことで安っぽくない、青年たちの日常が実にいい演出となっている。そして、価値観が変わり、ぶつかり合うまでに険悪な関係になったとしても、共に過ごしてきた友情の日々は変わらないというラストの締め括りは儚いが、何とも言えない感慨深さが温かい気持ちを沸かせる。青春はいつか終わる。だが日常は続いていく。だからこそ、青春は美しいのだと改めて認識するそんな、映画だ。