Reo

mid90s ミッドナインティーズのReoのレビュー・感想・評価

4.1
新たな世界を夢見る、少年の姿を描いた作品。

13歳。
自らの生き方を模索し、ありのまま行動する。何が正しいのか分からず、無我夢中にやりたい事をするのに価値がある。たとえ、いけない事であっても経験を積んで、学んでいく。
良くない言葉や表現、喫煙、飲酒、薬物に手を出してはいけないと学ぶために、教育が存在する。だが、少年時代にいけない事に手を出すのは、悪い事ではない。
そこでしか出会えない仲間が、悪影響しかないとも言い切れない。逆に、教育や縛られた生活には極端に言うと、単調な毎日と平凡な仲間しかできない。もしくは、出会うことすらないかもしれない。
なので、いけない事は子どもの内に教訓を得る、大切な機会になるとも捉えられる。現に、大人になって犯罪を犯す者はごまんといる。大人になり、善し悪しの区別が付かない者よりかは、断然利口である。

ジョナ・ヒルが監督の作品。
誰しも一度はワルに憧れた少年時代を、90年代のヒップホップカルチャーやスケボーを題材とし、物語が進んでいく。その中に、主演のサリー・スリッチが13歳という初々しさを見せつつ、徐々にグループへと溶け込んでいく姿を見事に演じ切っていた。
最初は、街に1グループは居るチンピラのようにしか見えなかった。だが、蓋を開けてみると、いい奴ばかりである。複雑な家庭環境や貧困から目を背けるため、今日も集う。ただ悪さをするのではなく、本気で仲間との会話を楽しみ、スケボーに没頭する、そんな場面がとても魅力的だった。
そして、兄と母の描き方にもグループとの対比関係を汲み取れた。
まず、憎しみしかない兄の存在であっても、自分の見たことのない大人の趣味や嗜好への道を切り開いてくれた尊敬みたいなものが伺えた。それから、子を想う母の姿は素敵だった。私みたいに遊び人になってほしくないという戒めかもしれないが、心配する母の気持ちが映像越しに伝わった。

追記
母役のキャサリン・ウォーターストン、相変わらず美しかった。
ファンタビが初見だったけど、こういう役柄もするんだという新鮮さを感じた。
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