しちれゆ

mid90s ミッドナインティーズのしちれゆのレビュー・感想・評価

4.0
青春、というのにはまだ幼すぎるスティーヴィーが憧れるクールな世界。ワル=クールと思いがちなこの年頃、でもクールだと思っていた年上のスケボー少年たちもそれぞれに躓き、開かない扉に向かってもがいている。スティーヴィーを殴ってくる兄イアンにも母親に対する屈折した思いがあった。今でこそ そこそこの母親ダブニーはイアンが小さかった頃は若い男を家に連れ込みやりたい放題だったことが語られる。そういう母親をやり過ごさざるを得なかったイアンが笑わない青年になったのも道理。
でも。母親は病院のロビーで眠り込んでいる仲間たちに「あの子に会う?」と言う。兄イアンも病室でスティーヴィーを見守り左右のポケットからジュースを出す。自分に1本スティーヴィーに1本。
mid90sに彩られた世界の中で普遍が語られる本作。
人が″時″というものを味方につけるかどうかは常に試されている。若い日々の怠惰や放埓が自分に返ってくるのは事実だけれどそれ以前に超えられない出自や環境が行く手を阻むのも現実で、この心優しき少年たちが狭い檻を蹴破って新しい世界にジャンプ出来るかどうかは分からない。
フォースグレードが撮り続けたビデオの中で屈託なく笑っている少年たちよ、煙草を吸うらしいジーザスにどうか祝福されますように。
しちれゆ

しちれゆ