2021

mid90s ミッドナインティーズの2021のネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

「A24製作だからとりあえず見とくか~」ぐらいのテンションだった自分を殴りたい。必ず見た方が良い、今年のベスト3には入る映画。

兄弟の葛藤、親子の葛藤、友人との葛藤、本当に日常によくある葛藤を描いている。どの国籍の人が見ても、どの性別の人が見ても、どの年代の人が見ても共感できるのでは。

特に、一波乱あってからのみんなの家庭事情や自分の過去を話すシーンが良かった。こうやって人と人とは絆を深めていくんだなー。病院の待合室でみんなが寝てしまってるシーン、ちょっと泣いてしまった。あと、あだ名のセンスが良い。

▼ファックシット(ファックシット)
裕福な家庭、恵まれた環境、ハーバード大学というキーワード。きっと教育親なんだろう。高校生という年齢から、そろそろ将来について真剣に考えるタイミングが迫ってきている。そこから逃げたい、そもそも考えたくない、自分に何か出来ることはあるのかという漠然とした不安、そんなところからパーティーや飲み狂いは始まったのでは、と感じた。

▼ルイ(スケボーマン)
弟を亡くした経験から、特にスティーヴィーのことを弟のように思っていそう。身内のような気持ちから、スティーヴィーを非行に走らせたくないという感情が誰よりも強かった。彼の家庭環境は劇中で詳しく語られることもなかったが、昨今のBlack Lives Matter運動からも分かるように、90年代ロスの白人・黒人問題はまだまだ根強かったんだなと会話の節々で感じた。ホームレス役は全員黒人だったのも、何かを表しているのかもしれない。

▼ルーベン(坊主)
一番下っぱだと思ってたスティーヴィーがいつの間にか自分よりも仲間に気に入られて焦る気持ち、分かるよ。象徴的だったのが、ルイからボード板を貰ったスティーヴィーを見て「まじかよ」と店を出たシーン。

▼フォースグレード(未来の映画監督)
フォースグレードみたいな奴が一人いると、仲間内が上手くいくと思う。一番目立ってなくて、一番存在感がなくて、でもいざいないとなると「あれ、あいつは?」と全員が気にしだす、そんな存在。

▼イアン(兄)
イアン、だいぶスティーヴィーにはイキってたけど本当に友達も彼女もいなかったのか?スティーヴィーを殴って泣き叫ぶシーンは、スティーヴィーに本当のことを言われて腹が立ったのを大声で抑えているのか、反抗するスティーヴィーを思わず殴ってしまった自分を諌めたいのか。もしかすると家庭外でのストレスを弟にぶつけていただけかもしれない。イケてる連中とつるんでいる弟を、何のセリフもなく見続けてしまったのは、羨ましさと、オマエなんかがというスティーヴィーへの腹立ちと、そんな友達がいない自分への悲しさが混じった時間のように思えた。弟と二人でゲームするシーンは、純粋に弟を心配する兄の姿だった。
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