カツマ

オーヴァーロードのカツマのレビュー・感想・評価

オーヴァーロード(2018年製作の映画)
3.9
不気味な何かが蠢いている。それは悪魔のような実験場、絶対に開けてはならないパンドラの匣。醜悪さは常軌を逸し、それはもう人としてのタブーを踏み越え、恐怖の工場と化していた。肉片は弾け飛び、銃弾は貫通し、戦争という殺し合いを舞台にしたもう一つの狂気が幕を開ける。連れ去られたら最後、もう二度と陽光の下には帰れない。

J.J.エイブラムスが製作に入ったことで、『クローバーフィールド』シリーズの続編なのでは?という憶測まで流れたが、これは全くの別物。異色のバイオレンスアクションに『何か』の要素を組み合わせ、それをノルマンディー上陸作戦とリンクさせる、というカルト臭全開の一本である。それでもC級映画とはならず、エンタメ性抜群のファンタスティックなB級臭が魅力的な作品となっている。『オーヴァーロード』とは、ノルマンディー上陸作戦も含めた連合軍側の大枠の作戦名を指す。これは戦争映画か、それともホラー映画なのか。物語は謎めいたまま突進し、その恐怖の在処を知らしめるのである。

〜あらすじ〜

1944年、激しさを増す第二次世界大戦中のフランス上空。アメリカ空軍、101空挺師団は、飛行機からの落下傘降下作戦を実行に移さんとしていた。艇内には純朴な青年ボイス、フォード伍長、悪態付きのティベット、カメラが趣味のチェイスらが乗り込んでいて、彼らはそれぞれに命からがら落下傘でナチスドイツに占領されたフランス領へと侵入。軍曹や仲間たちが犠牲になりながらも、ボイスら4人は道中で出会った女性クロエに導かれ、小さな村へと到達した。
そこではナチスドイツが闊歩しては、村人たちを教会に連れていくという事態が続いており、教会から戻ったクロエの叔母も病気にかかったかのような症状を呈していた。司令塔を爆破するという任務を負った4人は、フォード伍長を中心に作戦を開始。ボイスは先遣隊のティベットらを追って村の外に出ると、あれよあれよという間にドイツ軍の基地内に入り込んでしまい・・。

〜見どころと感想〜

戦争映画にバイオレンスアクションなどの要素をドッキングさせた、かなり面妖で異様な作品である。グロ描写が多いため、その手の映画が苦手な人は要注意。アクションはド派手で、銃弾もドンパチ、火薬量もバッチリ。B級のようでありながら安っぽくなく、後半に向けてストーリーの進行がスピーディーになるため、シンプルにエンタメ作品として面白い。ナチスドイツならこんなことやっていてもおかしくない?という発想がこの設定を生むあたり、もはやスプラッターホラーの域にも達している時間もあった。

配役は皆、地味な役者が選ばれているが、フォード伍長を演じたワイアット・ラッセルはあのカート・ラッセルの息子、という出自を持つ。ワイアットは最近では、ファルコン&ウィンターソルジャーで二代目キャプテン・アメリカを演じたりと知名度がアップ。元アイスホッケー選手ということで、アクションもこなせる武闘派として更に人気者になるかもしれない。他にはフランスの女優マチルド・オリヴィエ、ベテランのボキーム・ウッドバインらが出演。主演のジョヴァン・アデポは『フェンス』や『マザー』などに出演経験はあるが、主演としては大抜擢なのではないかと思う。

監督のジュリア・エイヴァリーは長編作品は2本と少ないながらも、長回しで爆破シーンを撮ってみたりトリッキーな趣向で遊び心も満載の作品を作り上げた。戦争映画としての側面は残しつつ、その他のジャンルを果敢にぶっ込んでくるあたり、豪快さと狡猾さを感じる脚本も見事だったと思う。これが○○○映画であるかどうかは分からない。個人的にはそのジャンルではないのでは?という作品でした。

〜あとがき〜

○○○の中身がモロバレかもしれませんが、なるべく前情報は無い方が楽しめるかと思い、敢えて伏せておきました(笑)

思いのほかグロ描写が多いので、中盤あたりで引いてしまう人もいるかも?しかし、それを乗り越えるとエンタメ要素抜群の後半がとにかく面白いので、最後まで観ることで得られる満腹感もあるかと思います。キワモノではありますが、面白い。人はそれをカルトと呼ぶのかもしれませんね。
カツマ

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