静かな鳥

オーヴァーロードの静かな鳥のレビュー・感想・評価

オーヴァーロード(2018年製作の映画)
3.8
第二次世界大戦下の戦争ものとして幕を開けた物語が、中盤からオカルティックなスリラーへと変貌していく。如何にもJ・J・エイブラムスらしいB級テイストな要素がふんだんに盛り込まれつつ、予算の使い方が上手いのかこれ以上ないほどの端正な出来。もともと期待していたけれど予想以上に面白い。

モノクロの配給ロゴ→セピア調のタイトル→爆撃の炎の鮮烈なオレンジ…と徐々に色味が足され、それに比例して地獄絵図と化していくオープニングからフルスロットル。爆音の音響効果も相まって臨場感が凄まじい。映画の"掴み"としてバッチリ。小隊の一人がゲロを吐く様子を映した後に、わざわざカメラを下に向けて床に飛び散る吐瀉物を見せつける辺りから既に、この映画の威勢の良さが窺える。

主な舞台は小さな村で、主人公の近辺のみでシーンを繋いでいくという比較的ミニマムなスケール。されど、メリハリを巧みに効かせながら見せ場を配置することで飽きさせない。むしろ舞台が絞られている分、その中で盛大に大暴れしてやる!という作り手の思いが、クライマックスにかけての大盤振る舞いなアクションでビシバシ伝わる。肝心の"陰謀ネタ"も大風呂敷を広げすぎない絶妙な塩梅なのがお見事。

様々なジャンルを跨ぎミックスしながらも徹頭徹尾、核となる戦場アクション描写(及びガンアクション)に抜かりがない。故に映画の一本の軸がブレず、全体的に手堅く纏まっている。後半に向かっていくにつれ容赦ないゴア描写で畳み掛けてくるのと同時に、ミッション遂行ものとしての面白さがプラス。手榴弾の用い方とか終盤のフック掛け拷問とか、一つ一つのディテールも印象的。ジュリアス・エイヴァリー監督の作品を観るのは初だが、手練れの技が光る。

伍長役の人がカート・ラッセルに似てるよなぁと思ってたらまさかの実の息子、ワイアット・ラッセルで驚き。"困った時の火炎放射器"も含め『遊星からの物体X』への目配せを感じる。ミア・ワシコウスカとレア・セドゥを足して割った感じのクロエ役マティルド・オリヴィエも素敵。

総じて満足度・満腹度の高い作品であり、観終わって気持ちよく劇場を後にできる。こういった滾るジャンル映画を1ヶ月に1本くらいは観たい。
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