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ブラック・ウィッチのhorahukiのレビュー・感想・評価

ブラック・ウィッチ(2017年製作の映画)
3.7
ママに黒魔術をかけちゃった!!
ムカついた腹いせにママに死の呪いをかけたらマジで悪魔(魔女)が来てママを殺そうとするもんだからさあ大変!
後悔して呪いを解こうとするJKの苦悩を描いたオカルトホラー。

そこまで評判良い作品じゃないけど、私的にはかなり面白かったです。最後まで夢中で見てしまいました^_^

あらすじ…
父親を亡くし、母親と2人暮らしをしている主人公のJK。仲間内では黒魔術が大流行していて主人公もドップリハマってる。でも、母親が口うるさく自分の言うことやることに口出ししてくるし、父親を亡くしたことによる心の傷が癒えていないようで毎日泣いたり怒ったり…。そして突然母親が引っ越すと言い出す。友達と離れるのが嫌な主人公だけど、母親は聞き入れてくれない。イライラが爆発した主人公は母親に死の呪いをかけ…。

「悪魔は悪を作らない。神への信仰を失わせ、人の心から悪を引き出す。」このセリフが本作の根幹を言い表してますね。悪魔というのは父親を亡くしたことに起因する母娘の間の不協和音。それが神である「親」への信仰(信頼)を失わせ、娘の心の中の悪を引きずり出す。

母親は「親」として振舞わなければならないのに、愛する夫を亡くした悲しみから立ち直れず情緒不安定。親であろうとするも上手くいかず、その皺寄せが娘にやってくる。夫を忘れるために身勝手な引越しを強行し、家では娘に当たり散らし、「お前を見てるとパパを思い出すから消し去りたい」とまで口にする。

でも「親」でありたい、「親」であろうとする母親の本心も痛いほど感じる。親も人だから間違いを犯す。間違いだと自覚しつつも、娘への態度を変えられないもどかしさ。

でも娘からすると、自分の身勝手で子どもを振り回すクソ親にしか見えないわけです。自分のことなんて何も考えてくれない。わかろうともしてくれない。私は親の奴隷でもなければ操り人形でもない。でも、だからといってどうすることもできない。友だちとも離れることになり、孤独の牢獄に閉じ込めれてしまうことの恐怖と反発。そんな気持ちが爆発してしまう。

こういった娘の感情の浮き沈みや、抱える不満と焦燥感、どうしようもなく膨れ上がる気持ちの描写が、抑え目だけど非常にリアルで引き込まれました。向こうへ歩いていく友だちを虚しく見つめるシーンとか凄く良かった。黒魔術とか悪魔崇拝に傾倒するのも父親の不在→神の不在から来る反発心の表れでしょうね。

悪魔や魔女を交えて物語は進行しますが、それは象徴的なものに過ぎず、本質はとても現実的なお話。親も娘も人間であり、弱い部分もあるし、完璧な存在ではない。母娘の間の不協和音という、放置したために肥大化した悪魔が娘の中で眠っていた悪を呼び起こしてしまう。

だから本作はオカルトな雰囲気を出しておきながら、思春期という微妙な時期における親との関係に起因する抑圧と爆発を描いたサイコホラーとも取れるし、むしろ本質はそちらの方にあると思う。クライマックスの、まるで娘の内面(虚弱な精神状態)を表すかのような虚実入り混じったシーン・演出も好み。

悪は誰の心の中にもいるし、その悪を呼び覚ますきっかけは日常の至る所に潜んでいる。そして、悪を退けるのは信仰(互いへの信頼・思いやり)であるということを反面教師的に描いた良作だと思います♫
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