モウドクウサギ

サンセットのモウドクウサギのレビュー・感想・評価

サンセット(2018年製作の映画)
4.2
これ、個人的にすげー好き。そもそも、「この世界の片隅に」をおさえて自分の2016年の年間ベストとなった「サウルの息子」の監督作なんだから、まあ、ツボに入るのも必然か。長回し、レンズ開放寄りカット、かつ主人公の執拗なまでのバックショット。「サウル」の演出はそのままに、混沌の1900年代初頭のブタペストに始まる。物語は時系列で進んでいるのに、真相がぼやけ、人物像が綻んでいく。やがて大きなうねりとともに、大戦になだれ込んでいく。
残念ながら我々は世界を理解するどころか、何がしかの個を正確に捉えることすら能わない。なぜなら、それらは、そもそも流動的で不確実だからであり、むしろ誠実に描こうとすれば、今作のようになるはずだ。対照的に浮き上がる、虚栄の象徴のような美しい帽子もアクセントになっている。