ドイツの現代芸術家リヒターの半生をモデルとした作品。
1937年ドレスデンでの少年時代から、独自の表現方法に辿り着くまでを描いていますが、ヒトラーのポーランド侵攻直前から、終戦、東西分断、ベルリンの壁と、その歴史背景はあまりにも濃厚で濃密。
そんな時代に生きた1人の芸術家が葛藤し、独自の表現を生み出すまでのビルドゥングスロマンであり、悩み抜いた末に、自分が閉ざしていた最も美しく最も悲劇的な思い出を解禁して、ついに自己の表現にたどり着いた場面は、まさに芸術が生まれた瞬間を切り取ったかのような美しいシーンでした。
家族の物語の裏で通奏低音のように流れる、誰も気づいてない恐ろしい過去の因縁が、緊迫感とともに189分の長い物語を中弛みなくラストまで引っ張っていきます。
そして、過去の体験と感情全てを芸術に昇華させた後の、スッと抜け切った感覚を見事に表したそのラストがまた絶品過ぎるという。。