ケイスケ

7月22日のケイスケのレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
3.9
2011年7月22日に起きたノルウェー連続テロ事件を描いた本作。この事件を題材にした映画は『ウトヤ島、7月22日』という先行作品がありますね。あちらはウトヤ島の銃乱射の恐ろしさをワンカットで描いていましたが、本作は事件に遭った被害者家族やブレイビクの裁判などの余波を描いています。

2011年7月22日、極右思想を持ったノルウェー人のブレイビクが首都オスロの政府庁舎前で爆弾を爆破させて8人を殺害。さらに労働党青年部のサマーキャンプが行われていたウトヤ島で無差別に銃を乱射し、69人の命を奪った。やがて世間ではブレイビクの裁判が始まり…。

ポール・グリーングラス監督が手掛けていることもあり、非常に緊張感のある重いドラマが描かれています。やはりウトヤ島での銃乱射場面は恐ろしくグリーングラス監督の『ユナイテッド93』の恐怖を思い出す。頭に銃弾の破片が残ってしまったビリヤルの家族のエピソードが辛い。前半の惨劇は本当に凄まじかったです。

実行犯のブレイビクを演じたアンデルシュ・ダニエルセン・リーという役者さんも凄い。誰もが尻込みするようなこの役をよく引き受けたと感心します。尋問中に「中止してくれ。殺した奴の骨で怪我をしたから治療してほしい」としれっと言うのが怖い。ノルウェーは死刑や終身刑が無いため21年の懲役なんですよね。

人間の恐ろしさを描くと同時に強さも描いています。前述したビリヤルは歩行障害に加えて左手がほとんど動かせず片目を失明。しかも頭の銃弾の破片が完全には取り出せず、いつ死んでもおかしくない状態。それでも彼はブレイビクを真っ直ぐ見つめ「僕は生きる道を選ぶ」と宣言します。いや本当たくましすぎるよ…。

やはりこういった凄惨な事件の余波は凄まじいものがあります。日本では銃による大量殺人はあまり馴染みが無いため、遠い国の出来事と感じてしまいがちですが、近年の『ホテル・ムンバイ』や本作のように映画を通して他国の事件を知るのは貴重な映画体験ですね。ぜひウトヤ島、7月22日と併せてご覧ください。