TOT

7月22日のTOTのレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
3.9
‪ドキュメンタリーのように息詰まるカメラが映す、死者77人の最悪のテロ事件。
犯人と被害者と弁護士と三者の物語を追っても散漫に感じないのは、観る私が怒りと疑問でいっぱいだから。
実際の犯人像に負けない為、この惨事を繰り返さぬ為の表明に思える台詞と演出に滲む希望と正義の希求。
難民としてノルウェーに来て、姉妹を殺された女性の言葉があまりに辛い。
「安全と自由と希望の国と思っていた。でも襲われて、姉妹を、全てを失って、また痛みと恐怖と怒りに逆戻り。それに、罪悪感でいっぱい。なぜ私が生き残ったの?なぜ私達が殺されたの?私の何がそんなに怖いの?」
主人公の言葉もまた刺さる。
「撃たれて、自分が生きるのかわからなかった。今も続いている。でも気づいた。まだ終わりじゃない。家族、友達、思い出、夢、希望、愛がある。彼には無い。彼はひとりぼっち、刑務所で腐る事になる。僕は生きることを選んだ。‬」
生き残って、怪我はしてないんだけど、心に深い傷を負った主人公の弟の苦しみについて触れているのも良かったな。
観ながら事件の経緯など調べて、ノルウェーに死刑が無いことや最高刑期の短さを知った。
裁判や刑務所での犯人のエピソードも読んだし、何より犯人の顔が頭から離れない。
映画だから描けること、虚構が照らす現実を(その逆も)考えた。
色々調べたくなる、ストレートに反応したくなる映画。

ウトヤ島銃乱射から生き残った青年のAMA。
http://askmeanything.blog.jp/archives/1006358678.html
その国のキャスト揃えて全員が母語でない言語の映画を初めて観た気がして不思議だったけど、製作や流通的な要因が大きいのかなと推測しつつ、外から事件を見れるというか、外国の話みたいに冷静に受け止められる効果はあるのかなとも思ったり。

なぜ英語なのかについて、犯人ブレイビク役アンデルシュ・ダニエルセン・リー「この映画を幅広い視聴者にアプローチするため、ポール・グリーングラスの使命は『7月22日』をグローバルなメッセージを持ったローカルな物語にすることだった」「ブレイビクは一人だったが、同じ考えの人は大勢いて、当時よりも増えている。物語ることはトラウマに対処すること。私たちは繰り返し物語らねばならない。私たちがこの映画を作る時、アーティストや俳優、製作者として、質問し、理解しようとする責任がある。事件を絶対に忘れない為に重要なんだ。」
https://www.metro.us/entertainment/movies/why-is-22-july-in-english?amp&__twitter_impression=true

グリーングラス監督「バイリンガルの国だし、ノルウェーの物語を広い世界に持ってこうと英語にした。ノルウェーのスタッフキャストとノルウェーで撮ればノルウェーのアイデンティティを持つノルウェー映画になると思った。私の仕事は彼らが物語るのを助けることだった」
https://ew.com/movies/2018/10/10/paul-greengrass-norway-terrorist-attacks-22-july/amp/?utm_source=twitter.com&utm_medium=social&utm_campaign=social-share-article&__twitter_impression=true
TOT

TOT