カツマ

7月22日のカツマのレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
4.2
2011年7月22日、ノルウェーのオスロ、ウトヤ島で発生した常軌を逸したテロ事件を風化させまいとする真実のドラマ。配信本数が激増し、一本ごとのクオリティの優劣に差が出始めてきたNetflixではあるが、この作品は現時点での今年のネトフリ配信作品の中でもベストだと思う。ドキュメンタリータッチかと見紛うほどのヒリヒリとしたリアル。第二次大戦後ノルウェー史上最悪の大惨事と言われるこの事件は、まだたったの7年前の出来事なのだということに愕然とさせられる。

銃乱射事件での生と死を分ける怖気立つほどの緊迫感。悲しみが押し寄せる事件後の慟哭の連続。辛すぎる。劇中の涙が伝染してしまうほどに悲しみのメーターが振り切れている。そんな悲しみの底から立ち上がる一人の青年の姿を通して、最後には未来から漏れ出す小さな明かりへと手を伸ばす。真実を描いているからこそ、肉薄する痛みと美化されていない重みが、この映画を説得力のあるものにしていた。

〜あらすじ〜

2011年7月22日、そこは首都のオスロ近郊の小さな島、ウトヤ島。ノルウェー労働党青年部の集会のため、多くの若者が島に集まってきていた。集会のスピーチを任されたヴィリャルは弟と共に島でサッカーなどを楽しみ、平和な一日となるはずであった。
しかし、平和だったはずの2011年7月22日は二度とやってこない。オスロ市街地にある政府庁舎が極右のキリスト教原理主義者ブレイビクによって爆撃され、瞬く間にテロのニュースはノルウェー国内を駆け巡った。続いてブレイビクは警察に変装し、ウトヤ島に上陸。銃を乱射し、次々と若者たちの命を奪っていく。
何とか崖の下に逃げ延びたヴィリャルたちだったが、銃声は少しずつ彼らのもとにも迫ってきていて・・。

2時間越えの作品だが、テロを描いた描写よりも後半の裁判のシーンと、悲劇から立ち上がるヴィリャルの姿が交互に展開し、いつしかそれらが交差して、その道筋を未来へと繋げていく。そこでは『ユナイテッド93』を撮ったポール・グリーングラスの本領が遺憾なく発揮されており、実話ベースの作品をエンタメ性を押さえながらも、鑑賞者の目を画面に釘付けにする圧巻の人間ドラマが誕生した。

まだ7年前の出来事ということもあり、映画化には反対の声も上がっていたそうだ。だが、この映画は悲しみだけではない。そこには未来へと繋がるドラマとして、希望を指し示すことも忘れていなかった。
最近はネトフリ作品を見なくなったという方にも、またはこれから加入してみようかなという方にも、ぜひ見てほしい作品ですね。
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