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7月22日のohassyのレビュー・感想・評価

7月22日(2018年製作の映画)
4.0
ポールグリーングラスの新作実録モノがnetflixで。
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彼の存在を知ったのは「ユナイテッド93」という、9.11で墜落した航空機のひとつ、ユナイテッド93便のハイジャックから墜落までの顛末を描いた作品。
その臨場感と緊張感たるや。
なんだこれは、と思ったものだ。

ジャーナリスト出身の監督として、とても緻密な調査を行うことで知られているらしいけれど、きっと徹底的な調査や仮説、そして裏付けを積み重ねることによって拠り所を作り、その上でこの緊張感ある大胆な演出を行っているのだろう。
こんな形でレビューをすることすら若干の後ろめたさを感じてしまうよう事件を映画に再構築するには、相応の覚悟と信条が必要だ。
ソマリアの海賊に襲われたコンテナ船の顛末を描いた「キャプテン・フィリップス」と合わせて、グリーングラス監督の傑作といっていいと思う。
ボーンシリーズも面白いと思うけれど、やっぱり別格だなあ。

本作も同様に、凄惨な事件を時系列で綿密に描き切る。
その粘質的な筆致と、一方でドライでジャーナリスティックな撮影が相まって、何というか、何と言えばいいか。
驚く。
事件そのものも衝撃的すぎて理解が追いつかないのだけれど、その描き方が、いやおそらく嘘はほとんどついていないし、過剰でもないだろうし、ご都合主義でもないように思えるから、何か事実を歪曲した偏りを感じるわけではない。

とは言えこれは作り物であるから、事実の一面を切り取っているのは間違いがない。
本作はグリーングラス監督が調べに調べて抽出した、事件のエッセンスだ。
ドラマだと言うことは分かっている、頭では。
でもこれは事件そのもののように思えるし、演者たちも本物にしか見えない。
その上、爆破や銃撃により80人以上がたった1人のテロリストに殺されてしまったという、いわば表層的なニュースだけでは届かない、事件の深淵を覗いている気になってしまう。
賛否はものすごく別れるだろう。
でもこれは価値のあるもののように思う。

いくつか忘れられない言葉がある。
犯人がなぜ子供達のキャンプを狙ったのかと聞かれ、「1番痛いところをつきたかった」と答える。
ものすごく冷静だし周到だ、怖い。

弁護士が犯人に告げる。
「あなたの主張は理解するつもりはないが、あなたの人権は必ず守る」
プロであろうとすること、犯人の人権を守ることが犯人の行為を否定すること。

首相が遺族に頭を下げる。
「申し訳なかった、もっと上手く対処ができたはずだ。 」
誠意を感じる、立派な人物なのだろう。

何より、5発の銃弾を受けて生還した少年・ゲイルが、裁判所で犯人を前にして語るもの。
恨みや怒りを超えることこそが、本当の意味で犯人に敗北を与えることになるのだ。
悲劇としか言いようのない出来事の中に、注意していないと見逃してしまうようなかすかな光を、ユナイテッド93同様に、監督はフィルムに納めてくれた。
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