茶一郎

ROMA/ローマの茶一郎のレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.8
 Netflixのグッドボタンを100兆回押しても足りないくらい……!
 廊下を流れる排水が、大空、そしてその空を飛ぶ飛行機を反射して映すという美しすぎるイメージ。家政婦である主人公のせかせかと働く様子を完璧に捉えるカメラのパンと長回し、水、大地、火、風、海、波、全てのショットが圧倒的に美しく、その美しさで観客を完全にノックアウトさせようとする完璧な映画『ローマ』。

 『リトル・プリンセス』、『大いなる遺産』とスタジオの大作を手がけた後、小品『天国の口、終りの楽園』を撮ったように、キュアロン監督は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』〜『ゼロ・グラビティ』という大作の後、再び『天国の口、終りの楽園』同様、ある人生の一部を切り取り、その後の登場人物たちの人生を讃える本作『ローマ』という大作でありながらミニマムな逸品を作り上げてくれました。

 本当に見事。映像美はもちろん、録音、音響も素晴らしく、これを劇場で公開させないのは刑罰に値すると思うほど体感映画の領域に本作はあります。
 何より「疑似家族」という、昨今、何度も語られる「家族」のあり方を問い、最終的に生命、重力を愛し大いなる人間賛歌に着地した宇宙旅行『ゼロ・グラビティ』同様、人間・人生の賛歌として最大限の強度を保ったストーリーも非常に力強いものです。『トゥモロー・ランド』における「妊娠」のイメージと「人間ナメんな!」というメッセージが、やはりこの『ローマ』でも語られている辺り、キュアロン監督の一貫したテーマを感じました。

 加えて、本作『ローマ』はタイルの種類をわざわざ揃えたというほど、キュアロン監督の記憶の再現でもあります。
 同じタイトル、フェデリコ・フェリーニ監督の『フェリーニのローマ』がフェリーニ監督の記憶を、風刺画を通して映像化した作品だった反面、本作『(アルフォンソ・キュアロンの)ローマ』はキュアロン監督の記憶を、自然主義をもって完璧に映像化した作品のように思います。強大な自然と小さな人生の対比、ワンショットワンショットが一枚一枚の絵画のように目に焼き付きます。

 「映画は終わっても、人生は続く」と、見事なまでに人生を賛歌した『ローマ』。改めてになりますが、本作を劇場公開しないというのは刑罰に値します。
茶一郎

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