MichinoriTaka

ROMA/ローマのMichinoriTakaのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
5.0
「再生」を描く監督、キュアロンがまたやってのけた。観終わった後に、写真を撮りにこう!と創作意欲を掻き立てられる作品をまた作ってくれた。あーあの空が本当に美しい。

舞台は監督が生まれ育った1970年代のメキシコシティ内のローマという地区。大家族の中の息子として育った彼は、住み込みのお手伝いさん達に囲まれていました。
今作はそのお手伝いさんの女性を主役にした「思い出」と、家族の「再生」を描いています。

冒頭からじっくりと見せる床の掃除、キュアロン十八番の長回しで映される家の中、ドリーで撮る街中の移動などなど。とにかく撮影が今まで観たことの無い世界を写してくれているのが嬉しい。
市内でも、大自然の中でも引きの画が大半を占めている表現がまた新鮮。
ここまで細かい部分までフォーカスが合っているのは、さながら巨大な風景写真のよう。それでも柔らかい感触がちゃんとあるのは彼の「思い出」を「映画」にする上では必要な要素だったのかもしれない。

Arri Alexa 65mmという大きなセンサーを持ったデジタルカメラを使って、白黒で撮る。フィルムで白黒で撮ると途端に懐古趣味になってしまうし、デジタルでカラーで撮ってしまうと最先端の表現になりすぎてしまう。しかも配給は昔ながらの映画配給会社ではなく、Netflixでの全世界同時公開。
やること粋すぎますよ、キュアロン御大!

タルコフスキーのような、水や炎の象徴的な映し方もあれば、フェリーニのような、音楽隊や動物が出てくる庶民的な映し方もあるのに、市街戦?のような緊迫感を出せるのも流石キュアロン!という感じ。
そういえば、『トゥモロー・ワールド』でのあの長回しにしろ、
『ゼロ・グラビティ』での宇宙での浮遊感にしろ、キュアロンは昔から新しい「映画」作りをしてきた人だっけ。この2作でも、今作でもキュアロンって「再生」を描きたい人なんだなと思った。あ、そういえばハリポタ3もある意味時間を遡って自信をつけるハリーにとっての「再生」の話なのかもしれないなぁ。

とりあえず、白黒なのに絶妙な濃淡で描かれているのでとても豊かです。カラーじゃないからって敬遠せずに是非観てね!あーそれにしてもあの海と空と、ラストあの空が忘れられない。写真撮りに行こっと。
MichinoriTaka

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