Kota

ROMA/ローマのKotaのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.7
“変化はいつもある。でも私たちはずっと一緒。”

70年代メキシコ。旦那に捨てられた妻と四人の子供、そして使用人クレオとの“家族の絆”を描いた作品。モノクロとは思えないほどの色あざやかな撮影技法と感情表現に後半は心が震えまくる。スマホで空き時間に見るのではなく、出来るだけ一気に真っ暗な部屋の大きな画面で観てほしい。

全体的に“フロリダプロジェクト”とテーマが似ていて(あちらは対照的にカラフルな世界観だけど)、人生上手く行かないという大前提の元、その中に垣間見える“一瞬の美しさ”を表現するのが驚くほどに上手い。屋上での死んだフリのシーンや、使用人の同僚と町を走るシーンなど、何気ない日常の中の幸せに気づかせてくれる。音楽は無くても、町の雑踏や犬の鳴き声、食器を洗う音や波の音がこの映画を形作る。

冒頭床の水に映ってどこか別世界のものだった飛行機だが、ラストでは空を飛ぶ実際の飛行機を映すことで、確かに未来に向けて明るく何かが変わった事を隠喩してる。旦那が車を全くぶつけずに車庫に入れるのと対比されて、妻は車を傷つけまくるところに旦那の自尊心の高さと、それについて行く事ができない妻の心情を表現。ショットのその全てが素晴らしいんだ。

なにより圧巻なのがラスト30分のビーチでのシーン。ワンカットで平行に左から右へ動くショットのみで構成されたこのシーンは背景の夕焼けと、その後家族が抱き合うショットまでがまるで1つの絵画であるかのような美しさで涙が止まらなかった。ヒーロー物やSF、ミュージカルが興行を叩き出すこの時代に、未だこんな繊細で奥ゆかしい映画が作られて、確かに評価されている事がとても嬉しい。今後の映画の未来にもほのかに明るい光を差してくれたような傑作だった。Netflixよ、映画の価値を本当に大切にするなら独占せずに映画館で流してくれ。
Kota

Kota