MARUKO

ROMA/ローマのMARUKOのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
5.0
これはほんとに映画かと疑う位。モノクロ映画はとにかく目がきれいに映る。

ここまで静かで、こんなにも心をかきみだされる映画をはじめて観たかもしれない。
ありのままを映し、ありのままを伝える。激動の渦の中枢でなく、端にいる普通の家族を映し、その様子をひたすら静かに描く。
撮影は特出して素晴らしいが、そこにいわゆる映画的な面白さも音楽も、わざとらしいセリフや演技もはっきり言って皆無。でも、それだけ削られるとストーリーに集中させられるから、伝わってくる熱量は半端ない。
監督のメッセージにあった"記憶の共有"。主人公はその記憶を共有する自分達でもあるのかもしれない。

静かな夜、あっちの遠くの方で祭りがやってる。確かに太鼓の低い音はドンドンと聞こえる、でも静か。(田舎でよくある)
祭りという表現はここでは良くないけど、遠くの騒がしさは確かに感じるけど遠いほど静か。
世界情勢がニュースで知れる今、地球の
どこかで起きている騒動は日本にいては静か。
この作品は、その"いつもは静かな祭り"のなかに突然放り込まれた感覚におちいる。

お願いだから目の前で見せないでくれ…。
成すすべのないクレオをみていた私たちの心は、当然の如く曇る。
女はいつも孤独。
こんなことならと一番言ってほしくない、でも言わずにはいられないのかもしれない言葉。
しかしモノクロのせいで曇りと錯覚するあの海の空は、皮肉にも肌が痛くなる日焼けをするほどに晴れていた。
結婚式を横目に見る。

社会の"波"に飲まれる。
今私たち感じる波は、この頃ほど目立って大きく見えないかも知れない。でもその波は、私たちの思わぬところに影響し、かつ見えないほど大きい。

波に立ち向かって助け合って生きていくぞって。
不本意だけど、どうせ部屋の雰囲気が変わったなら気分をかえて。
いつものように洗濯を干せる今の日々に幸せを感じて。

ここまで凄まじい作品だとは思わなかった…
万人受けするものとは到底思えないけど、ほんとに心から素晴らしい作品。自分はこの映画ほんとに好き。

最後に飛行機を見るときはうつむいていない。


p.s.絶対子供が好きだから余計つらい。
彼が責任を持てなかったのも、その事に現実味を持てないという、社会の波に飲まれているからかもしれない。
無論トップ10入り
MARUKO

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