しゅん

ROMA/ローマのしゅんのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.0
2019.3.18 シネスイッチ銀座
映画館で再見。分娩室の痛々しさがずっしりくるところが響いてきたな。「産む」ことに対するあれやこれやが映画を通して直感できるところが素晴らしい。

冒頭の飛行機は見落としていたかも。飛行機の模型も二回登場する。

2019.1.3 netflix

火事の中、仮装の男が歌い出す途中に木が倒れるタイミングが素晴らしい。それとほとんど同じようなキャメラワークで後半の波のシーンが映されるから堪らない。この映画における長回しは日常的な時間感覚を宙吊りにして、ある種宇宙的な無重力の時間をそこに呼び込む。カメラが正確に平行移動を重ねる、つまり律儀に重力に従っているのに、映されている間の時間は重さから解放されている。女の苦難と国の争乱と犬の跋扈は溝口健二を想起させるが、それ以上に溝口から受け継いでいるのは『西鶴一代女』『雪美人絵図』に現れる水のモチーフと長回しの時間感覚だろう。同時にそれらの特徴はタルコフスキー『ノスタルジア』『サクリファイス』にも共通しており、溝口〜タルコフスキー〜キュアロンの系譜がここに出来上がる。とかいうとちょっと鬱陶しいだろうか。いずれにせよ、ソベック先生の腕に複数のバックが引っかかっているように見える画面の二次元性の利用(後半のカニのオブジェも同様の効果がある)、飛行機の反復、分娩室やパーティー会場での奥行き、冒頭と最後だけ使われるキャメラの垂直移動など、あらゆる技術をふんだんに使い込んだ鼻息ものの力作。ちょっと力入りすぎなくらいである。

余談ですが、スペイン語話者が「Yo La Tengo!」って言ってるのはじめて聞いた。
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