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ROMA/ローマのdeenityのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.0
Netflix配信で今年度のゴールデングローブ賞外国語映画賞を受賞。これほど評価されるような作品を見れるなんてNetflixに加入していてよかったと感じる今日この頃です。

先に言っておきますが個人的には苦手な作品でした。ストーリー性とかではなく、淡々と、ただ淡々とメキシコのローマの中で生きていく家族を映しただけの作品で、映画に乗り切れなかったからです。
しかし、それを差し引いてもお釣りが返ってくるほどにこの作品は見所もあります。圧倒的な映像美ですね。モノクロを基調としているにも関わらず、不思議なことに脳内では色鮮やかに映し出されているような錯覚がおきてしまうほど鮮明で、それは光と影の明暗を巧みに表現したアルフォンソ・キュアロンの手腕でしょう。
この監督と言えば『ゼロ・グラビティ』ですよね。あの迫力にもかなり驚かされましたが、あの作品にはエマニュエル・ルベツキの力がありました。彼を思わせる長回しやワンシーンのインパクトなんてのは本作にも十分ありましたし、何か授かったんですかね。文句のつけようがない映像美です。

個人的には冒頭の床に映る空の様子と家政婦のクレオが家中の電気を一つずつ消していくシーンですね。冒頭の床を掃くだけのシーン。時折水が流れてきて、泡立ち、反射が揺れる。それを長く写してるだけなのにどうしてあれほど美しいんでしょうか。ただ、ついてた電気を消す。ポツリポツリと画面が暗くなっていくだけ。それなのになぜあんなに明暗の美に惹きつけられるんでしょうか。どちらもそんなに長く写す必要ある?ってシーンです。それでも見てられるんです。間違いなく美しさに惹かれてしまうせいですね。

クレオの視点で物語は描かれていき、その周囲に起こる様々な変化が表現されています。暴動や出産、子どもが溺れるシーンなど、内容以上に映像の力で重く感じます。
しかし、その中でラストに吐き出すクレオの本音はグッと来るものがあり、それを温かく包み込む浜辺のワンカットはモノクロで表現しているとは思えない温かさがあります。

ラストにこの作品が誰かに向けた作品だと明かされます。自分自身の幼少期の体験を元にした作品のようですね。ストーリー自体は相性が良くないですが、この映像を見るだけで価値はあるだろうと思えた作品でした。
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