10円様

ROMA/ローマの10円様のレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.6
アルフォンソキュアロン監督と言えば「ゼログラビティ」などのSFスペクタクルや、「リトルプリンセス」などの子供を描くのが上手い監督というイメージがありました。今作の「ROMAローマ 」は彼のキャリアの中ではまたかなり毛並みの違った作品となっています。それもそのはず、これはキュアロン監督が子どもの時にお世話になった家政婦、リボリアさんに向けた感謝と贖罪の映画なのだそうです。

この映画を観るにあたり1970年代のメキシコの政治情勢を勉強しました。人種による貧富格差、PRIによる反政府運動と虐殺事件。これは映画の中でも描かれていますが、映画を鑑賞するにあたりそれほど重要な事ではありません。何故ならこの映画にとっての時代状況はキュアロンが幼少時代に体験した全貌や意味、意義など全く分からないけど何となく知っている背景にすぎません。それを物語ったようなモノクロ映像も曖昧な記憶としての描写を助長しているように思えます。
キュアロンが描きたかったのは何となく知ってる時代の中で唯一鮮明に覚えているお手伝いさんの事だけだったのです。キュアロンはきっと自分を子どもに帰らせてストーリーを考え、そして大人の視点で感謝を表現したのだと思います。

Netflixの映画がこれ程まで高い評価を獲得し、キュアロンもアカデミー監督賞を受賞するといった事態は、今後の映画界に大きなうねりを与えたと思います。映画の需要と供給のシステムが変化しつつあるのかもしれません。これを映画業界はどのようにとらえるのか。10年後もしかしたら映画館の数は減少して、独立資本系映画はパソコンで観るのが当たり前になるって事があるかも。でもやっぱり映画は劇場で観ないと感動は伝わりませんよね😓とは言いつつもNetflixには大変お世話になっております。

最後にどうでもいい事ですが、クレアの彼氏が所属している反政府運動家。ファルコネスというらしいですが、日本語で1!2!3!…と掛け声を出しながら竹刀で型を鍛錬しているんですが、19!の次が30!に飛ぶんですね。これが不思議でした。これもキュアロンの曖昧な記憶の一つなのかな?
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