りっく

ROMA/ローマのりっくのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.5
冒頭の水溜まりから、破水、さらには海と、水のイメージをモノクロで重ねつつ、無機質な死と有機的な生。男に頼らず生きていく女性たちの寄り添いを、一定の距離間で傍観するかの如し。

キュアロンの私的映画でありながらも、歴史に飲み込まれていくのにどうしようもできないメキシコの歴史の影と、日陰で家族を支えていた家政婦に光を当てるコントラストは見事。

右から左へパンするキャメラの動きが、終盤に子供たちが海で溺れかけるのを、ひとり波に抗い海へ入っていく主人公の姿を、左から右へパンして捉える長廻しショットの対比に唸らせられる。

また、部屋の灯りをひとつずつ消していく姿を、360度パンして捉えるショットも、ラストに家の中がどれだけ変化したのかを示すショットと呼応しており、そのいちいちが豊かで、隅々まで映画の力としか形容しがたいものに満ち満ちており、思わず息を呑む。
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