柏エシディシ

ROMA/ローマの柏エシディシのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.0
映画が時代や場所、観客のそれぞれのバックグラウンドを越えて、時に自分とはかけ離れた人物の人生を体験させれてくれる一種の魔法やタイムマシーンであると考えるならば、本作は現時点での最高峰で最先端。

天才撮影監督エマニエル・ルベツキ共に革新的な撮影スタイルに挑戦してきたキュアロン監督であればこその、画期的且つ貫禄も感じさせる流麗なカメラワーク。
前時代的なモノクロームな画面も、作品の寓話性を高めつつ、なにより陰影の強調より、見えないはずの色彩さえ感じさせるのは何故だろう。ノスタルジーや寂寥感より、彼の地特有の躍動感というか生命力が際立つマジック。

そして、今回、劇場で観れて本当に良かったと思ったのが音響効果。街の喧騒、鳥のさえずり、隣の部屋から微かに聴こえてくるくぐもった声。スクリーン越しの世界が、作りものの世界ではなく、自分の記憶や夢の様な実在感をリアルに感じられる。

そんな映画の装置に則り、主人公たちの日常や日々の生活の中でのさざ波のような感情の起伏に自身を重ねる2時間弱の小旅行。自分にとっては、そんな映画体験的快感を存分に楽しめた一本。
(作中でオマージュを捧げられている監督作「グラビティ」とは物語や設定は真逆アプローチなれど、作品から受け取れる印象は似ている様に思う)

その特殊な公開経緯に関しては、作品の価値とは分けて語られるべきだとは思うけれど、この一見素朴(に見える)な映画は劇場公開向けの映画製作資本を得るのが実際のところ難しいのが今のハリウッドで、その受け皿としてNetflixが役割を果たした事には、やはり注目せざるを得ない。