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ROMA/ローマのsachiのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
3.8
32

待った甲斐あって、劇場で観られました。ありがとうございます。

アンティークショップで昔の写真や絵葉書を見ると、それが日本であれ外国であれ、そこに写る時代や場所や人々の暮らし・人生について、ぼんやり思いめぐらせてしまう。時代も国もまったく関わりのない他人であっても、どこか懐かしく思えたり、微かに愛しさ切なさを感じたりするのは、古色蒼然としたプリントのマジックだろうか。この映画を観ていて、それと同じ気持ちになった。

冒頭の床を洗う場面、デッキブラシで何度もこする音、それにつられて流された水が単調に動く様子、犬の吠え声、飛行機が過ぎる空。なんてことのない日々の暮らしが、社会情勢であれ個人のことであれ心に刻み込まれる出来事と絡みあって、記憶に保存されていく。視覚・聴覚に残る、似通った日常の体感が自分の中にもあるから、そこに自身がいたかのように思えてくる。

記録も記憶も、その時々その場その場の「印象」が強調されて取り込まれるが、この映画の手法もそうなっている。監督自身の過去を描いたとのことなので自然とそうなるのか。

それにしても、ここに出てくる男たち〜 …。
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